先週の「メモリアルトーナメント」で、5カ月ぶりのツアー復帰を果たしたタイガー・ウッズ。前人未到のツアー83勝目をトーナメントホストのジャック・ニクラスの目の前で達成できるかにも注目は集まったが、結果は40位タイで終了。課題と不安を残す1週間となったものの、予選通過を果たし、4日間プレーできたことについては満足感を漂わせた。
「4日間プレーできて、またこうしてプレーできた。久しぶりだ。復帰戦にしてはタフな1週間だったけど、感覚をつかんで競技に復帰できたのはよかったね」
過去5勝を挙げ、タイガーにとっては相性のいいコースであるミュアフィールドビレッジも、風が吹いてグリーンが乾き、ニクラス好みの高速グリーンに仕上がっていたため、ピンそばに絡めるのは難しかったようだ。しかもこのところ、フロリダの自宅付近のゴルフ場(メダリストGC)のバミューダ芝に慣れていた彼にとって、ポアナ混じりのベントグラスに慣れるのに時間を要したという。
「パットが全然よくなかった。フロリダのバミューダ芝はちょっとしかキレないが、ここのグリーンは10~12フィートの速さが出ていて、キレ具合も(バミューダより)大きい。だからちょっと勝手が違ったね。なんとかこういうグリーンに慣れていかないと……」
「今年はグリーンのスピードが速かったと思う。ジャックが好きなグリーンのタイプだ。でもいいショットにはご褒美が与えられるが、悪いショットに対しては手厳しく罰が下る」
タイガーは基本的に、オーガスタナショナルのような高速グリーンを好むタイプ。メジャーなどでもグリーンスピードが遅めだと、「グリーンが遅い!」とすぐに反応する。しかし、競技ゴルフから離れ、自宅付近のスピードの遅いバミューダグラスで練習してきた彼にとって、久しぶりのトーナメントセッティングは難しかったようだ。次に出場する大会は明言は避けているが、「全米プロ」直前の「WGCフェデックス・セントジュード・インビテーショナル」に出場する可能性も高い。それまでにトーナメントセッティングでのグリーンの速さやラインの読みなども、もう一度みっちり練習を積んでくることだろう。
だが、彼にはまだ気がかりなことがある。2月のジェネシスインビテーショナル時よりは良くなっているとはいうものの、いまだに背中に違和感や痛みがあるというのだ。2日目、4オーバー(76)を叩いたタイガーはラウンド後に以下のように語っている。
「体が十分に回転できなくて、ちょっと苦戦したんだ。今朝のウォームアップの時に違和感があって、あまりよくなかった」
彼は練習場に入ると、まずはウェッジなどで軽く素振りをしながらストレッチを行うが、その後パッティング練習をし、とくにウッドなどの長いクラブを速く振っているうちに、おかしくなったという。本来、練習で体をほぐし、調子を上げていかなくてはいけないところだが、逆に痛みや体の硬さを感じ、動きも制限されてしまったそうだ。18ホールをなんとか完走したものの、ラウンド中、手で腰を強く押すシーンも見られ、長いクラブに関しては普段通りのバックスウィングを取ることができなかったという。また、フィニッシュでは両手でクラブを握り続けることもできなかった。これを見ていた同伴競技者のマキロイは
「彼は体が十分に動いていなかったね。でも背中については何も言ってなかったよ。彼はそんな言い訳するような人じゃないから」
と語っている。両手でフィニッシュまで振り切るスウィングができず、右手が離れてしまうこともあった。そういう時は右に弱々しくフェードする球が出てしまうため、途中から左を向いてフェアウェイキープできるよう調整していたという。
「ずいぶん年を取ってしまったもんだね。だから僕もその変化についていかないといけない。でも年をとることは楽しいことではないね」
ここ数年のタイガーは、朝目覚めて背中の調子を確認し、ウォームアップをしてラウンドに臨むが、そのウォームアップ自体が吉と出るか凶と出るか、わからないのだという。
「こういうことは今後はもっと頻繁に起こるだろう」
ツアー中断中にはしっかりトレーニングを積み、入念に背中のケアも行ってきた。それでも、その日その日で様子を見ながら、体の痛みとつきあっていくしかないようだ。現在ケガをしているというわけではないが、かといって、健康な体とは言い難い44歳のタイガー。ツアー優勝記録まであと1勝に迫り、ジャック・ニクラスのメジャー優勝タイ記録まであと4勝だが、なんとか前人未到のこの二つの記録を塗り替えるまで、持ちこたえて欲しいところだ。