アプローチが安定しない原因は「手首の返し過ぎ」だった
ジョニ男:ウェッジのフルショットができるくらいの距離のあるアプローチはいいんですが、パターでもいけるくらいの短い距離のアプローチが苦手なんです。実際、パターでいける状況ならパターでいっちゃうんですけどね。
小澤:「テキサススタイル」ですね。テキサスは風が強いから、アプローチで球を上げないようにするために、パターで寄せることが多いんですよ。
ジョニ男:でも、ラフだったりバンカー越えだったり、どうしてもウェッジじゃないと打てない状況もあるじゃないですか。そんなときの短いアプローチでミスすることが多いんです。
小澤:分かりました。では、まず20ヤードくらいの距離を想定して打ってみてください。
――数球打つものの、オーバーしたり、左に外したりとなかなか安定しない。そんなジョニ男に美奈瀬が質問を投げかける。
小澤:実際のラウンドでは、短い距離のアプローチでどういうミスが多いんですか?
ジョニ男:以前はシャンクが出たんですが、最近は左にいくんですよね。
小澤:あぁ、やっぱり。今見ていたら、20ヤードという距離に対してはちょっとヘッドが走り過ぎていて、それで左に行くんですよね。スウィングに「飛ばし屋」の傾向が出ています。
ジョニ男:飛ばし屋なんて言われると、なんか嬉しいような気もしますが、でもアプローチで飛ばし屋って、良くないことですもんね。どこにその傾向が出ているんですか?
小澤:フィニッシュでフェースがクローズになっているんですよ。これは手首が返ってヘッドが走ったという形なんです。だから、ジョニ男さんのアプローチのフィニッシュを後ろから見ると、飛ばし屋のフォロースルーになっているんですよ。
ジョニ男:フィニッシュの形でわかっちゃうんですね。
小澤:フェースターンしてヘッドが走るとランが出やすいからオーバーしやすいし、あとフェースローテーションが大きくなることによってヘッドに重力がかかってこないので落下しにくくなりトップが出やすいんですよね。
ジョニ男:たしかに、写真で見るプロのアプローチのフォローの形と私の形は、フェースの向きが違う気がしますね。
小澤:ジョニ男さんのフォローは、ヘッドがインサイドに抜けてフェースが返っていますよね。でもショートアプローチは打った後に、ヘッドがターゲット方向に出てフェースは返っていないという形が良いんですよね。
ジョニ男:その形にするには、どうしたらいいんですか?
小澤:ハンドファーストで構えると、右手首に角度ができますよね。上から見ると右手が「く」の字に見えると思いますが、この「く」の字をスウィング中にずっとキープしているイメージでアプローチをしてみてください。この右手の角度が崩れてしまうとヘッドが走ってしまうので、距離感が合わなくなってしまうんですよ。
――何回かやるが、右手の「く」の字が伸びてしまうジョニ男に、美奈瀬が練習ドリルを授ける。
小澤:普通に構えたウェッジに、ヘッドを逆さまにしたウェッジを重ねて持ち、一本のクラブのようにして構えます。逆さまにしたクラブは、左脇から体の背後に抜けるようにしてください。
ジョニ男:え、これで打つんですか。
小澤:はい。打ったあとに、フォローでシャフトがわき腹に当たらないように打つのがこのドリルのポイントです。脇腹に当たってしまうときは、ローテーションをして右手首の角度が崩れ、ヘッドが走ってインサイドに抜けている証拠ですよ。打った直後に、手元をちょっと持ち上げるように打ってみてください。
ジョニ男:なるほど。イメージ的に分かりやすいです。でもコレ、今までやっていた打ち方と全然違いますね。
小澤:手元が持ち上がると、一気に手首がロックされてヘッドが走らなくなります。ちょっと窮屈な振り方に感じると思いますけど、これがアプローチで飛ばない振り方をする大事なポイントなんですよね。
――ドリルの成果を試してみると、手首のローテーションが抑えられヘッドが走らない打ち方ができるようになった。その結果、球がターゲットに対して真っすぐに出るようになり、距離感も合ってきた。
ジョニ男:上手く打てました! もう、右手首を「く」の字に固めちゃいたいです!
小澤:他のショットが打てなくなっちゃいますよ(笑)。
ジョニ男:今までドライバーからアプローチまで、基本的に打ち方は同じだと思っていたんですけど、全然、違うスウィングになるんですね。パターの打ち方に近いんですかね。
小澤:今打ってもらった20ヤードの距離なんかは、パターより飛ぶクラブでパターと同じ距離を打つわけですからね。アプローチは飛ばさない打ち方なんです。
ジョニ男:ああ、そう考えるとわかりやすい。グリップの握り方からしてもほかの番手と違いますよね。
小澤:ほかの番手と野違いが分かりやすいように右手だけで説明すると、アプローチの場合は、右手のひらを下に向けるようにして右手首に「く」の字を作り、右手を下げます。そして「く」の字をキープするようにして右腕を振る、これが短いアプローチショットのイメージ。でも飛ばすショットの場合は、右手のひらを斜め上に向けるようにグリップを下から握り、フォローでは右手のひらが下を向くように右手を返していくんです。
ジョニ男:いやぁ、今までいろんなレッスンを受けてきましたけど、一番ビックリしたかもしれないです。ありがとうございました!
TEXT&PHOTO/古屋雅章 撮影協力/スイング碑文谷