昨年は渋野日向子に河本結に原英莉花に……と次から次へと大活躍する選手が現れ、今年に入っても先日行われた女子チャリティ試合で吉川桃が勝つなど勢いが衰えない黄金世代の女子プロたち。なぜ1998年度生まれの彼女たちはこれだけ活躍できるのか? そして、その理由は自分のゴルフのマンネリ感を打破することにも応用できる……? メンタルコーチ・池努が分析!

仕事の生産性の10%以上が隣の同僚の質に影響される

今の自分のゴルフレベルにマンネリ感を覚えている方にお届けします。「人生を変えたければ付き合う人を変えなさい」誰もが聞いたことがある、またはビジネス書などで目にしたことがある文言だと思います。この言葉が正しいとしたら「ゴルフの腕前をあげたければゴルフで付き合う人を変えなさい」ということになりますので、あなたが誰とゴルフをするかは、ゴルファーとしてのレベルアップに影響するものなのかもしれません。

この記事はその「ゴルフで付き合う人」が自分にどれだけ影響を与えているかを示すものになると思います。ただ、今回の記事は簡単に付き合う人を変えたほうがいいと提案するものではありません。これまで築いた人間関係ほど大事なものはないと思いますので、あくまでもゴルファーとしてのレベルアップに必要なひとつの選択肢として参考にしてほしいと思います。

さて、仕事でもゴルフでも私たちのまわりにいる人の行動の質があなたの行動にも大きな影響を与えています。数千人のビジネスマンを対象にしたハーバード大学の研究で「仕事の生産性の10%以上が隣で仕事をしている同僚の質に影響される」と分かっています。「10%以上」もです。

たしかに職場やカフェなどで仕事をするときに周囲の人たちがバリバリと仕事をしている雰囲気だと、影響されて仕事がはかどるような感覚になったことはありませんか。また逆にハワイアンミュージックが流れているようなゆるい雰囲気のカフェで作業をするとしたら、当然そのゆるさが自分にも影響されることも感覚として理解できるはずです。

サポートしてきたプロゴルファーも、たとえば自分よりレベルが高いツアープレーヤーと一緒に合宿などをすると、帰ってきたときに「やっぱりあれぐらいの集中力とこだわりが必要だと感じた。これからはあの基準でゴルフをしたい」というように影響された話をします。このように良くも悪くもその人の周りのレベルが自分の行動やパフォーマンス、成長に影響するのです。

画像: 渋野日向子や河本結など次から次へと活躍する選手が続く98年生まれの黄金世代。レベルの高い選手が周囲にいることで影響される「ピアプレッシャー」によって互いに高めあう効果が生まれる(写真は2019年のリゾートトラスト 写真/大澤進二)

渋野日向子や河本結など次から次へと活躍する選手が続く98年生まれの黄金世代。レベルの高い選手が周囲にいることで影響される「ピアプレッシャー」によって互いに高めあう効果が生まれる(写真は2019年のリゾートトラスト 写真/大澤進二)

自分の周囲の人から受ける影響を心理学では「ピアプレッシャー」と呼びます。同調圧力のことで、周りの人の価値観やルールに合わせ、行動の質や量を合わせなければいけない、と感じてしまう心理的圧迫感のことです。もし、今ゴルファーとして頭打ち感を感じていて、どうにかしてこの現状を打ち破りたいとしたらこのピアプレッシャーをゴルフのレベルアップに使ってみるのも手です。

人はどうしても快適な人間関係に身を置くことで心理的な安全性を保ちたいものです。同じようなスコア、スキル、意識のゴルフ仲間、自分と同じレベル感のゴルファーを指導しているコーチなどと普段から接することで安心して楽しくゴルフをすることができます。

逆に自分のレベルより高い集団とラウンドをするとなると、他者評価を気にするなどいつもの仲間とゴルフを楽しむときとは違うプレッシャーや不安を感じ、逃げ出したくなるような感情になったりもするはずです。そういう経験が重なると、自分より高いレベルのゴルファーからのゴルフの誘いは断るようになったりします。

現在の自身のゴルフレベルにマンネリを感じているのであれば、このピアプレッシャーをあえて使い、自分がなりたいレベルに到達しているゴルファーと付き合い練習やラウンドを共にする、なりたいレベルのゴルファーを見ているコーチをつける、ということをしてみることもひとつの選択肢ですね。

このように考察していけば「ゴルフの腕前をあげたければゴルフで付き合う人を変えなさい」ということもあながち嘘ではないように感じますので、レベルアップのひとつの手段として活かすこともありかもしれませんね。

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