渋野日向子らが出場した「ASIスコットランド女子オープン」の最終日で、5アンダーで並んだ4人のプレーオフを制したのは35歳、一児の母のステイシー・ルイス。畑岡奈紗と野村敏京がともに1アンダー12位タイと奮闘した最終日の模様を、プロゴルファー・中村修がレポート!

次週の「AIGオープン」(全英女子オープン)の前哨戦として、同じリンクスタイプのコースで開催された今大会。出場した日本勢は、渋野日向子、畑岡奈紗、河本結、野村敏京、山口すず夏の5選手でしたが、渋野、河本、山口の3選手は初めて体験するリンクスの風やフェアウェイの硬さ、ポットバンカーなど、ゴルフ発祥の地ともいわれるスコットランド特有のコースの特徴に翻弄され、予選落ちに終わりました。

画像: 通算1アンダー12位タイでフィニッシュした畑岡奈紗(写真/Paul Severn)

通算1アンダー12位タイでフィニッシュした畑岡奈紗(写真/Paul Severn)

予選通過した畑岡奈紗・野村敏京両選手との差は一言でいえば”経験”によるものが大きかったと感じました。畑岡奈紗選手に渡英前に話を聞いたところ「ヨーロッパでは結果が残せていないので、リンクスを想定したコントロールショット、ショートゲームを中心に練習している」と話してくれました。リンクスコースでどんなショットやアプローチが必要になるのか、身をもって知っていることでしっかりと準備できたことが12位タイという結果につながったのでしょう。

野村選手についても腰の故障から復帰して体調に不安がなくなったこと、もともとリンクスコースは好きだということで攻略法も身についていると見えました。画面に映し出されたグリーンを外した際の柔らかく浮かせるアプローチやパッティングからも、リンクスへの対応力は見てとることができました。

画像: リンクスは好きだという通算1アンダー12位タイでフィニッシュした野村敏京(写真/Paul Severn)

リンクスは好きだという通算1アンダー12位タイでフィニッシュした野村敏京(写真/Paul Severn)

一方で、予選落ちした渋野・河本の二人はショットの調子は悪いようには見えなかったものの、硬いフェアウェイを転がって深いラフやポットバンカーにつかまったり、リンクス特有の吹き抜ける風に影響されたり、硬いフェアウェイからのショットにクラブが弾かれトップするようなシーンも見られました。

河本選手は2日目終わりの会見での言葉では次のように話していました。

画像: 8オーバー84位タイで予選落ちした河本結(写真/Paul Severn)

8オーバー84位タイで予選落ちした河本結(写真/Paul Severn)

「フィーリングの良いショットが思った結果にならなかったり、実力不足というか試合に集中できていない部分が大きかった。収穫しかないと思っていますが、(同組でプレーした元世界ランク1位の)リディア・コや上位の選手を見て学ぶというのが今の自分に必要なこと」(河本結)

渋野選手は2日目終了後会見で、予選落ちという結果を少しは予想していたと話しました。

「(青木翔コーチとは)こうなるよね、私の今のスウィングや技量では敵わないよね、という話をしていました。その中でも今年練習してきた転がしやクッションを使うアプローチができていたのでそこに関しては収穫があると話しました」(渋野日向子)

画像: 14オーバー132位タイで予選落ちとなった渋野日向子(写真/Paul Severn)

14オーバー132位タイで予選落ちとなった渋野日向子(写真/Paul Severn)

バーディが出るまで34ホールかかったのでしんどかったとも話し、今週の「AIGオープン」へのプレッシャーも感じるようになってきたと不安ものぞかせました。やはり地面の硬いリンクスコースは日本では経験できないので、2、3日の練習ラウンドだけではなかなか対応するのは難しいというのが本音だと思います。

そしてもっとも難しいのはリンクスコース特有の吹き抜ける風への対応ではないでしょうか。私自身、セントアンドリュースをラウンドした際に経験しましたが、とくに横からの風の対応は風とケンカさせるのか風に乗せるのかという選択を、どれくらいの影響があるのかという想定をした上で毎ショット行わなければなりません。これはリンクスコースでのプレーを数多くこなさないとなかなかイメージできないことだと思います。

いいと思ったショットが硬いグリーンに弾かれ奥に外れたり、グリーンのアンジュレーションのせいでポットバンカーや深いラフにつかまるとメンタルへのダメージも積み重なっていきます。ショットの精度やバリエーションだけでなく、メンタル面のタフさも要求されることも忘れてはなりません。

画像: 4人のプレーオフを制し「AISスコットランド女子オープン」で優勝を手にしたステイシー・ルイス(写真/Tristan Jones)

4人のプレーオフを制し「AISスコットランド女子オープン」で優勝を手にしたステイシー・ルイス(写真/Tristan Jones)

優勝したステイシー・ルイスでさえ、前半9ホールで順調にスコアを伸ばすも、10番のパー5でバーディが獲れず、難しい11番ではダブルボギーで5アンダーに後退します。そのあと14番でバーディ、15番でボギーと、本人曰くローラーコースターのようだったという後半をしのいでプレーオフに残りました。スコアを落としてもそこから粘る、メジャー2勝・35歳のベテランの試合運びに勝つべくして勝った強さを垣間見ました。

画像: 「AIGオープン」が開催される「ロイヤルトゥルーンGC」の8番パー3

「AIGオープン」が開催される「ロイヤルトゥルーンGC」の8番パー3

さて、今週の「AIGオープン」(全英女子オープン)の開催される「ロイヤルトゥルーン」は1878年に開場した古いコースで、全英オープンは過去に9度開催されています。ポステージスタンプと呼ばれる切手サイズにしか見えないようなグリーンが特徴の8番パー3が有名ですが、耐えるゴルフが要求されることは間違いないでしょう。

風や芝、地面の硬さ、英語など海外での試合に慣れている畑岡奈紗と野村敏京はどこまで上位に行けるか、現在進行形で収穫の真っ最中の渋野日向子と河本結の二人がどこまで巻き返せるか、他に上田桃子、稲見萌寧、勝みなみ日本勢も参戦し、7名の日本勢がどんな戦いを見せてくれるでしょうか。タフな戦いになりそうです。

一部内容を訂正しました(2020年8月18日9時34分)

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