大型ヘッドらしい安心感で、直進性が高いZX5
スリクソンのニュードライバー「ZX5」と「ZX7」。この2モデルのトピックとして真っ先に挙がるのが、PGAツアーで戦う松山英樹が実戦投入したことだろう。
プレーオフシリーズ2戦目「BMW選手権」ではZX5、最終戦「ツアー選手権」ではZX7のプロトタイプを使用し、松山本人も「今までのスリクソンのドライバーの中で、間違いなく一番飛ぶと思います。とにかくヘッドが良くて、よく飛びます。この飛距離性能と安心して振り抜ける、“振り感”が気に入っています」とコメント。
長らく他メーカーのドライバーを使用し、飛距離を筆頭にドライバーへのこだわりも非常に強いことで知られる松山が変えたことで、大きな注目を集めている。国内でも、なかなかクラブを変えないタイプの選手である星野陸也がZX7を使用して即優勝と結果を出している。
ではZX5とZX7、それぞれどのような違いがあるのだろうか。さっそく両モデルを神奈川県・茅ヶ崎ゴルフ倶楽部に持ち込み、プロゴルファー・中村修がヘッドスピード45m/s前後を想定してコースで試打。その模様を弾道測定器「フライトスコープ」を用いて計測。5球打ち、それぞれ平均データを算出した。
ロフト角はいずれも9.5度のモデル、シャフトは純正の「ディアマナZX」(ZX5が50グラム台、ZX7が60グラム台)のSフレックスを使用して試打を行った。
まずはZX5から見ていこう。まず、2モデルの分かりやすい違いとしてソール部のウェート位置と数があるが、ZX5の場合はヘッド後方の深い位置に一つ。
「このウェートの配置からも重心位置をより深くし、慣性モーメントを高めようという意図が見えます。操作性というよりも、どちらかというと直進性を重視したモデルですね」と中村。
構えた際の印象については「460ccの大型ヘッドらしい、安心感がある見た目です」という。実際に構えてみると、投影面積が大きく、ヘッド後方がやや尖ったように見える形状は慣性モーメントの高さを感じさせる。
ではZX5を5球打った平均値を見てみよう。
キャリー:245.2ヤード
総飛距離:252.5ヤード
ヘッドスピード:45.1m/s
ボール初速:65.2m/s
打ち出し角:15.1度
スピン量:2870rpm
「非常に弾き感が強いんですが、打感は硬すぎず、ボールの柔らかさもしっかり感じ取ることができました。弾道を見ると、やはり直進性が高いです。球のつかまりも良くて、高さも出ていますね」(中村、以下同)
前作のZ585もスリクソンとしては“やさしめ”のモデルだったが、さらにもう一段階つかまりやすさを感じる仕上がりだという。
460ccだけど小ぶりな印象。操作性の高いZX7
続いて試打したのはZX7。こちらはソール部後方、トウ寄り、ヒール寄りの位置に2つのウェートが装着されている。これについて中村は「ZX5より(重心位置が)深くなり過ぎない位置にセットされているので、スピン量を抑えて操作しやすいような作りになっていると思います」という。
ZX7もZX5と同じくヘッド体積は460ccとなっているが、ZX7は構えると「やや小ぶりに見えますね」という。
「構えてみると精悍な顔つきで非常にスッキリとした見た目。460ccのヘッドなんですが小ぶりに見えますね」
ZX7の試打結果平均値は以下の通りだ。
キャリー:238.5ヤード
総飛距離:256.2ヤード
ヘッドスピード:44.8m/s
ボール初速:65.4m/s
打ち出し角:11.8度
スピン量:2030rpm
「打感についてはZX5と同様に、弾き感は強いけど硬すぎない、という印象です。シャフトの違いと重心位置の違いが打ち出し角とスピン量にしっかりと表れています」
データを見ると、かなりの低スピン。かつ、打ち出しもZX5に比べると低めだ。ヘッドスピード50m/s前後のゴルファーが叩きにいっても十分に応えてくれるヘッド性能に仕上がっている。
そして、松山、星野がZX7を選んだ理由として大きいのが操作性の高さではないか、と試打した中村は指摘する。
「ZX7はもちろん飛距離や低スピン性能も高いですが、何より操作性が高いです。フジサンケイクラシックをテレビなどで観ていた人はわかると思いますが、星野選手はホールによってドロー・フェードを使い分け、弾道の高さもコントロールすることで距離の長い富士桜カントリー倶楽部を攻略していましたよね。この操作性の高さが、星野・松山両選手がZX7を気に入った理由だと思います」
ZX5とZX7の両モデルを打ち終わった中村は、こう総括する。
「性能的には直進性のZX5、操作性のZX7という分かりやすい棲み分けがなされていて、飛距離性能に関してはほぼ同等。どちらのモデルも基本的にはつかまりが良く、右にすっぽ抜ける感じはありませんでした。求める弾道によってチョイスすると良いでしょう。両モデルとも実戦投入した松山選手が最終的にどちらを選ぶかは注目ですが、もしかするとコースや自身の調子によって使い分ける、という使い方もあり得るのかな、と思います」
純正のディアマナZXシャフトに関しては「ヘッドスピード45m/s程度で打って少し軟らかく感じました。両モデルともつかまり具合は高いと感じましたが、シャフトスペックの影響もあるかもしれません。自身のヘッドスピードによってはカスタムシャフトも一考の余地アリですね」とのことだ。
さっそく国内で結果を出し、ドライバーへのこだわりが強い松山が両モデルとも実戦で使用するなど、プロたちの動向からもその性能の高さがうかがえるZXドライバー。引き続きツアーでの使用状況に注目しながら、発売を待ちたいところだ。
取材協力/茅ヶ崎ゴルフ倶楽部