昨年ツアールーキーながら全英女子オープン制覇という快挙を成し遂げ、賞金女王争いも繰り広げた渋野日向子。そんな彼女をサポートし、渋野を“しぶこ”と呼ぶコーチ・青木翔は「コーチは選手の能力を引き出すために彼ら以上に彼らのことを理解、把握するべき」だという。そのために必要なこととは一体?自身の著書「打ち方は教えない」から教えてもらおう!
考えや思いを言葉に出してみる
教え子が自主的に成長する指導法を取り入れてみたいというコーチやマネージャー、親御さんがすぐに使える内容を挙げてみました。また誰かに指導を受けているけれど、上達や成長を実感できないという人のヒントにもなる内容なので、ぜひ実践してみてください。
コーチの役割は、選手の能力を引き出すことです。だからコーチは彼ら以上に彼らのことを理解し、把握しておかなければなりません。
そのためには日ごろから、選手自身が自分の考えを話しやすい環境を作っておく必要があります。
たとえば僕は小学生の教え子に、学校のこととか流行っているもの、仲のいい女の子は? なんていう話をよくします。
最初からゴルフの話をしてしまうと、構えてしまったり、杓子定規のやり取りになりがち。だからまずは彼らが話しやすい話題にして、頭の中の情報を言葉にして伝えることに慣れてもらうのです。
選手の自主性を育むには気持ちを言葉にする訓練をする
話をするときは、その時どう思っていたのか、なぜそうしたのかという気持ちの部分をよく聞くようにしています。
なぜならそれ自体が、選手の自主性を育てるトレーニングでもあるからです。彼らが気持ちを言葉にしようとしているとき、頭の中では自分を客観視しています。このちょっと離れた場所から自分を見る能力が、課題発見や問題解決には欠かせません。
気持ちを言語化できるようになれば、ゴルフのこともちゃんと自分の言葉で話せるようになります。
技術レベルが上がってくると、その日のラウンドでキーになったショットについて、狙いや考え、さらにはどんな気持ちだったかまで言葉にできなくてはなりません。
そうすることでショットが失敗であれば課題が見つかるし、成功であれば回ナイスショットの確率を高めるカギを発見できるからです。
この言語化をする作業は、プレーをするのと同じくらい重要です。
でも、なかには話をするのが苦手な子もいます。そんな選手には「ゴルフノート」を作ってもらいます。日ごろから自分の練習や考えをアウトプットする癖がつけば、無理に会話という形式をとらなくても方法は何でもOKです。
話をするのが得意な子もいれば、書くのが得意な子もいる。形を決めずにコミュニケーションをとることが重要です。
「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より