2009年の全英オープン以来の勝利を2020-2021シーズンの開幕戦で挙げた
息子のレーガンさんをキャディに携え最終日最終ホールをバーディで締めくくったシンク。通算21アンダーは後続に2打差をつける見事な勝利だった。
ターンベリーが舞台の全英オープンでトム・ワトソンとのプレーオフを制してメジャーチャンピオンに輝いたのが11年前。全英5勝のレジェンドが60歳目前に掴んだ奇跡的な優勝のチャンスを、言い方は悪いがシンクが横からヒョイとさらったような格好だった。
マスコミは勝ったシンクより負けたワトソンが紡いだストーリーにスポットを当て、メジャー初制覇したというのにシンクは完全に脇役に回ってしまった。
あれからシンクは“ターンベリーの呪縛”に苦しんできたように見える。全英でツアー6勝目を挙げた翌年から優勝はゼロ。12年にはフェデックスカップのポイントランク139位に沈み、以降ランク三桁が続き昨シーズンも144位でプレーオフ進出を逃している。
2016年には妻リサさんの乳ガンが発覚。闘病中の妻を支えるため試合を休んで最愛の人に寄り添った。
リサさんとはシンクがジョージア工科大学在学中に学生結婚。すぐに長男が誕生、続いて今回キャディを務めた次男レーガンさんが生まれ、妻子を養うため卒業前にプロ転向を決意している。
アマチュア時代は2歳半年下のタイガー・ウッズのライバルと呼ばれ1995年に行われたプロ転向前のタイガーとのエキジビションマッチでシンクが勝ったことで俄然注目を集めた。
プロデビュー翌年には現在のコーンフェリーツアー(下部ツアー)で当時の最年少記録で賞金王に輝き、1997年にレギュラーツアーで初優勝。以来コツコツと勝ち星を重ねてきた。
タイガーのライバルと呼ばれていた頃電話インタビューしたことがある。すると彼は「タイガーと自分はまったく違う。彼はゴルフ界のスーパーエリート。僕は結婚が早かったのでそれこそ家族を養うためにがむしゃらに稼がなきゃならなかったんだ」と語っていた。
当時小さかった息子が父親を超えるほどの背丈になり優勝争いの最中、冷静にアドバイスする姿は感慨深かった。2人のもとに駆け寄った妻リサさんはすっかり元気を取り戻し絵に描いたような素敵な家族の姿を見せてくれた。
ターンベリーの呪縛がようやく解け、家族の絆は益々強固なものになった。シニア入りするまでのシード権も確保。シンク家に季節外れの春がきた。