PGAツアーは開幕2戦目で“いきなり全米オープン”
先週の「セーフウェイオープン」から早速2020〜2021年シーズンが始まっているが、今週は2戦目にして今シーズン初のメジャー「全米オープン」がニューヨークのウィングドフットGCで開催される。
ウィングドフットは過去数々のナショナルチャンピオンシップが開催されているが、全米オープンは今年で6回目。直近では2006年、フィル・ミケルソンが最終ホールでダボを叩き、優勝を逃してグリーンで頭を抱え込んだ全米オープンが記憶に新しいだろう。
また、1997年、デービス・ラブⅢが最愛の父を飛行機事故で亡くした後に優勝した全米プロのシーンを思い出す人もいるかもしれない。最終ホールで虹が出たが、まるで天国の父が息子の優勝を後押ししているかのような印象的な光景だった。
さて、このウィングドフットは近年の全米オープンで見られた「ワイドフェアウェイ」、「短めのラフ」「アンダーパーが続出」という傾向とは異なる、トラディショナルな難コースだ。フェアウェイは狭く25〜30ヤードほどしかない。最近の平均は40〜60ヤードで、エリンヒルズに至ってはさらにフェアウェイが広かったため、ティショットの正確性が物を言う全米オープンになりそうだ。ラフも長いので、なおさらフェアウェイキープがカギになる。その上、ドッグレッグホールも多いので、ドローとフェードの打ち分けもスコアメイクのポイントだ。
ウィングフットのゴルフディレクターのスティーブ・ラビドー氏は「我々のコースセッティングの目標は、6月に開催するのと変わらないようにすることだ」と語っており、優勝スコアを8オーバーと予測している。2006年に優勝したジェフ・オギルビーは5オーバーで優勝したが、「イーブンパーで回れれば最高」という昔懐かしい全米オープンが繰り広げられそうだ。
優勝候補はやっぱりDJ? 松山英樹、ミケルソンの戦いにも注目
なお、今大会最大の注目選手といえば、世界ランク1位、フェデックスカップチャンピオンであり、先ごろ「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたダスティン・ジョンソンだろう。8月の全米プロでは3日目を終えて首位に立っていたにも関わらず、コリン・モリカワに逆転優勝を許したが、その後のフェデックスカップ・プレーオフでは3戦2勝という驚異的な強さを誇る。
「過去最高のゴルフができている。ドライバーからパターまで絶好調。今、世界で最高のプレーヤーだと自負できる」と自信満々だ。
彼は飛ばし屋としてのイメージが強いが、ここ数年は125ヤード以内のショートゲーム(ディスタンスコントロール)にも注力し、以前のような「感覚的なゴルフ」ではなく、スイング幅によって正確に距離を打ち分ける、精度の高いゴルフを展開。そのおかげで世界ランクトップ10から外れることがない。以前は「スイング幅によって、どのくらい距離が違うのかわからなかった」というDJだが、弾道測定器トラックマンの出現により、彼のゴルフは大幅に改善された。
また、優勝候補としては世界ランク2位のジョン・ラームや昨季ツアー3勝を挙げたジャスティン・トーマスなども無視はできない。
また、このような難コースで本領を発揮するタイプの日本のエース・松山英樹にも注目だ。彼は3週間前の「BMW選手権」で多くの選手がオーバーパーを叩く中、ジョン・ラームの優勝スコアと2打差の2アンダーと食い下がり3位タイに入賞。「いいショットが出始め、パットも少しずつよくなり始めている」と調子は上向きなだけに、粘りのある活躍を期待したいところだ。
今回は「メジャー男」のブルックス・ケプカがケガで欠場となり、昨シーズンのフェデックスカップで5位に入ったスコッティ・シェフラーがコロナウィルス検査で陽性反応が出たため、欠場となったが、コリン・モリカワ、ロリー・マキロイ、ザンダー・シャウフェレなど若手の強豪揃いの今年の全米オープン。
かたや50歳を迎え、シニアツアーで初優勝を挙げたフィル・ミケルソンもかつて自滅負けした因縁の地で、キャリアグランドスラムを達成するかに注目が集まっている。おそらく自力で出場するのは今年で最後になる可能性も高いミケルソンだが、14年前の悔しさをバネに、ウィングドフットの地で鬱憤を晴らしてほしい。