昨年デビューイヤーでシード獲得。今年は最終戦参戦も視野に
9月第1週のアンダルシアマスターズで8位タイに入った川村は続くポルトガルマスターズで3日目を終え2位タイ。欧州ツアー初優勝の期待がかかった。しかし最終日はスコアを伸ばし切れず単独5位で終戦。それでも百戦錬磨の強者が揃う異国で川村の健闘は大いに評価されるべきだろう。
前週のアイリッシュオープンでもぎりぎりで予選を通過しながら決勝ラウンドで好スコアを連発。
14位タイに入り12月に行われるツアー最終戦(DPワールドツアーチャンピオンシップ)への出場権(トップ60)まであと一歩と迫る65位に浮上した。
“ゴルフの旅人”を自負する川村が9月に旅をしたのはスペイン、ポルトガル、アイルランドの3カ国。
毎週天候も変われば芝も変わり文化も変わる。普通なら移動するだけでヘトヘトになりそうだが、
それを楽しめるのが川村の強みだ。
18年欧州ツアーのQTを受け出場権を掴んだ彼は17年の国内ツアー賞金王の宮里優作さえシードを守れなかった層の厚いヨーロッパで、デビューイヤー(19年)にシード権を獲得。今年も着々と同地で足場を固めている。
思えば国内ツアーに挑戦し始めた10代のころから(デビューは12年)川村は実力もさることながらその独特な雰囲気で注目を集めていた。
ほぼ独学でゴルフを学び高校時代に日本ジュニアチャンピオンになっているのだが、独学ゆえか自分のスウィングを解説するのが苦手。こちらが何を聞いても感覚的な答えしか返ってこずゴルフ雑誌的には記事にしにくく腐心したもの。
当時よく一緒に練習していたのが同じ歳で現在選手会長を務めている時松隆光。高校3年でQTに挑戦し19歳でシード獲得、13年のアジアパシフィックパナソニックオープンで歴代3位の年少記録(20歳96日)で優勝を飾った川村とは違い時松の出世は遅く初シードは15年まで待たなければならなかった。
我々が川村を取材しているときも時松はまるで付き添いのようにひっそりとその光景を眺めていた。それがいまやツアーを代表するプレーヤーなのだから人にはドラマがある。
時松をめぐる話は次の機会にお伝えするとして川村である。彼にとってツアーで成績を残すことはもちろん大事だが、知らなかった世界を見聞することこそが最重要事項。言い方は悪いが広い世界に飛び出すための道具としてプロゴルファーという職業を利用しているのだ。
ゴルフ以外に見たいものが世界には溢れている。それを探求したいという強い思い、すなわち原動力が川村を支えている。