「右OBに打ち込んでしまったらどうしよう」「グリーン手前のバンカーに入ってしまったら……」と、ゴルファーであればラウンド中に不安を抱かないことはまずない。しかし、プロも教えるメンタルコーチ・池努は「不安は成長や結果を出すためのエネルギーにもなる」という。果たしてどういうことだろうか?

今回の記事では「不安」はモチベーションに変わるというテーマで進めていきたいと思います。以前の記事でも書きましたが人は常に今に不安を持つ生き物です。「次のショットが曲がったらどうしよう」「ゴルフ歴の浅い彼にスコアで負けてしまったら嫌だなぁ」と。人はうまくいっているときはそれが崩れるんじゃないかという不安、うまくいっていないときは次もうまくいかないんじゃないかという不安が出てくるように人は常に今に対して不安を抱く生き物なのです。

画像: 不安はモチベーションに変えることにできる"プラス要素"でもあるとメンタルコーチはいう(撮影/矢田部裕)

不安はモチベーションに変えることにできる"プラス要素"でもあるとメンタルコーチはいう(撮影/矢田部裕)

一般的にはこの「不安」という感情を持つことはマイナスなものであるという印象があるようです。しかし、実は不安がモチベーションに変わり、パフォーマンスを上げている側面があるとしたらどうでしょうか? また不安になりやすい人のほうが成長速度が速いとしたらいかがでしょうか? もし、それらが本当だとしたら不安は成長や結果を出すためのエネルギーになっているということになりますよね。

スペインのマラガ大学の不安に関する研究で約600人のビジネスマンや学生を対象に次の2つの問いに答えてもらいました。

【1】期限という不安は仕事を終わらせることに効果があるか?

【2】うまくいくかどうかという不安は生産性の向上につながっているか?

この研究で分かったのは不安をモチベーションアップに活かせていると考えているビジネスマンや学生ほど成績や仕事面での成果や満足度が良好だったことです。ポイントは私たちが「“不安”が行動へのモチベーションにつながってる」と認識しているかどうかです。

参考にしてほしいと思うのが不安を抱いている自分をネガティブにとらえるのではなく不安が自分にメリットを与えている、不安は自分に恩恵を与えているという側面を理解し、不安をモチベーションにつながるものだととらえることです。

実際にあなたが学生のころに励んでいたスポーツ、あるいは仕事においても、期限や他者からのプレッシャーにより生まれた不安が行動につながり、成長につながった経験も沢山あるはずです。ちなみにあなたはこれまでに不安が成長や成果につながったと言えるどんな経験をしてきましたか?

下記の例のように2~3個思い出してみてください。

・学生のころの指導者に「次の試合でダメだったらその次はないと思え」と言われ、その不安を解消するために大量行動することで成長することができた

・「このままではライバルに負けるかもしれない」という思いがスイッチになり、行動の質・量ともに大きく高まり成長できた

・納期も予算も足りないという難しいプロジェクトを担当し、なんとかできる方法を絞り出し寝る間も惜しんで仕事に没頭した。それが自分のキャパを大きく広げた。

いかがだったでしょうか? きっとあなたにも期限や他者からのプレッシャーなどの不安が成果につながったこともあったかと思います。やはり、不安はモチベーションに変わる側面もあるものですね。不安は悪者ではなく、行動するために必要なものとしてとらえていきたいものですね。

また、さらに言うと不安とは理想があるから生まれるものです。「このスコアで回りたい」「あの人に良いところを見せたい」「良い順位を残したい」「練習でできていることをラウンドでも発揮したい」そういった理想や目標があれば必ず不安は生まれるものなんですね。このような視点も持っていて損ではないかと思います。

今現段階で不安を抱えている状況ではなかなか今回の記事の内容は受け入れがたいことかもしれませんが、不安をネガティブにとらえるより「モチベーションや成長につながる」ととらえた方が気持ちは楽になりますし、行動の質もあがるはずです。今回の記事について考えることで少しでも不安に対するマインドセット(考え方)が良い方向に向かえば幸いです。

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