「褒める」の上手な使い方
教育や子育てでよく聞く「褒めて伸ばす」という言葉。
褒めることは必要ですが、何でもかんでも褒めれば伸びるというわけではありません。
もちろん褒めることで、やる気が出たり自信につながることはあります。でも褒めるだけでは、失敗や課題に気づきにくくなってしまうというデメリットもあります。
だから僕はここぞというときにしか褒めません。ことあるごとに良い部分を見つけて褒めていたら、選手はそのうち褒められ慣れて、たいして喜びを感じなくなってしまうでしょう。いくら年齢が小さくても、選手は馬鹿ではないのです。
コーチは成功を認めることよりも、課題を探すほうに注力しなければなりません。
たとえば、全国優勝を目指す教え子が地方大会に出て、最終日「69」の好スコアを出し優勝したとしましょう。ただ順位は1位でしたが、パー5でボギーが1つあった。
僕はこの子を褒めません。
「全国で優勝をしたいのに、肝心の最終日、パー5でボギーを打っていて勝てるのかよく考えてみろ」と言わなければなりません。
厳しいかもしれませんが、彼が目指しているものを考えると、スコアを伸ばさなくてはいけないホールでボギーを叩いてしまった要因を、しっかりと見つめ直す必要があるからです。
一方でゴルフを楽しく上手くなりたいというジュニアが「90」を打っても楽しそうにしていれば、「よく振ったね、楽しく回れてよかったね」と褒めるでしょう。
それは彼らが目指しているもの、手に入れたいものが違うからです。
コーチはこのように選手のレベルに応じて、コミュニケーションを柔軟に変えなければなりません。一概に「褒める」と決めてしまうと、マッチする選手とそうでない選手が出てきてしまうでしょう。
選手の目標が達成されたときに褒める
ちなみにこれは経験則ですが、小中学生のジュニアには「褒める」ことよりも、「負けることの回避」や、「ご褒美」のほうが効果大です。
子どもは基本的に負けず嫌いです。ゲーム形式の練習をすると負けることを極端に嫌がるので、信じられない集中力と執念をもって取り組みます。
また、「これができたら〇〇」というご褒美も大好きです。僕はよくご褒美に、みんな大好き、焼肉を使います(食べるのもトレーニング!)。
選手が夢中になるものは何か。普段からそれを把握しておくと、彼らのやる気スイッチを押しやすくなるでしょう。
「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より