スピン量が増えるデメリットを消しつつさらに高い打ち出し角を実現
10月6日に開催された千葉オープン。ツアー外競技ではあるものの多くの国内男子プロも参戦。大槻智春とのプレーオフを制した大岩龍一が優勝を果たした。
ピンと契約する大岩はG425LSTドライバーをバッグインしているのだが、そのセッティングが面白い。なんと、ロフト10.5度のモデルをネック調整機能でさらに寝かせ、11.5度にして使用しているというのだ。
「9度もテストしましたが、弾道が高くてつかまりも良く、それでいてスピン量が増え過ぎなかったので11.5度にして使ってます。飛距離はちょうど300ヤードくらいですね」(大岩)
近年ではドライバーの技術の進化もあってロフト10.5度のモデルを選ぶ選手も増えているが、そこからさらに寝かせたセッティングをプロが採用するのは珍しい。
大岩のセッティングについて耳にし、実際に試したプロゴルファー・堀口宜篤も「思ったよりもスピン量が少ないですね。このセッティング、全然アリです」という。一体どんな点が優れているのだろうか。
「ロフトを寝かせることでまず打ち出し角がさらに高くなりますよね。そのぶんスピン量は増えてしまいますが、元々G425LSTはスピン量が抑えめなモデルですから増えても200~300回転前後の上昇で収まります。結果、低スピンを維持しつつさらに高い打ち出しとなり、キャリー、ランがより期待できるようになっていますね」(堀口、以下同)
堀口がG425LSTの10.5度をニュートラルな位置で打った場合と11.5度に調整して打った場合、それぞれを弾道計測器フライトスコープで3球計測した平均値が以下となっている。
【10.5度の場合】
キャリー:243ヤード
トータル飛距離:275ヤード
ヘッドスピード:46.1m/s
ボール初速:66.3m/s
打ち出し角:12.2度
スピン量:1902rpm
【11.5度の場合】
キャリー:261ヤード
トータル飛距離:283ヤード
ヘッドスピード:46.3m/s
ボール初速:67.9m/s
打ち出し角:13.0度
スピン量:2215rpm
たしかにスピン量は微増しているものの、打ち出し角の高さが増したことでキャリーが伸び、トータル飛距離は8ヤード伸びている。低スピン性能が高いG425LSTロフトを寝かせることで、スピン量が増えるというデメリットを消しつつさらに飛距離アップが図れるというわけだ。さらに飛距離面だけでなくヘッド性能や見た目の印象にも変化があると堀口は言う。
「G425LSTは引っかけなど左のミスを嫌がるゴルファーに向けた性能となっていますが、ロフトを寝かせることで、つかまった感じの弾道が打てるようになっています。見た目的にも、構えたときにフェースが見えてくるから安心感もありますね」
このロフトを寝かせる調整は、プロ並みのヘッドスピードがあればこそ、といった代物ではなく、アマチュアであっても十分に恩恵を得られると堀口。
「ただし、当然合う・合わないはあります。まず、G425LSTのような低スピン性能が高いヘッドで行うこと。どのヘッドでもロフトを寝かせれば良い結果が出るわけではありません」
たとえばテーラーメイドの「SIM」シリーズの中ならSIMドライバー、キャロウェイで言えば「サブゼロ」の名を冠するモデルなどが低スピン性能の高いヘッドと言えるだろう。
それに加えて「しっかりとアッパー軌道でインパクトできること」が条件だと堀口は言う。
「最下点からしっかりとアッパー軌道で打てれば、ロフトが寝ていても高弾道・低スピンが実現できますからね。弾道測定器などで計測した際に3~4度くらいのアッパー軌道で打てる方なら、十分低スピン・高弾道で飛ばせるでしょう。逆にダウンブロー気味に打ってしまう方はスピン量が上がってしまうので寝かせずに使ったほうが良いでしょうね」
しっかりとアッパー軌道で打てるかはゴルファーごとのスウィングやシャフトのキックポイント、フレックスによっても変わるので一概には言えないところだが、堀口が言っていたように屋内練習場でスウィングデータを取りつつチェックしてみると良いだろう。
なにより、G425LSTに限らず低スピン性能が高いモデルを使っていて、かつネック調整機能が搭載されていさえすれば気軽に試せるというのも大きなメリット。さらなる飛距離アップの可能性を秘める11.5度カスタマイズ、興味のある方は試してみてはいかがだろうか。