国内女子ツアー「スタンレーレディス」を制し、通算2勝目を挙げた稲見萌寧。2日目のパーオン率驚異の100%を誇るアイアンスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

フェードショットで2日目はパーオン率100%

台風の接近により2日目がキャンセルされ、全2日間36ホールの短縮競技となった「スタンレーレディス」。その最終日、上がり4ホールで3バーディを奪って首位タイのペ・ソンウと淺井咲希に並び、3つどもえのプレーオフを制した稲見萌寧選手がトロフィーを勝ち取りました。

画像: スタンレーレディスで通算2勝目を挙げた稲見萌寧(撮影/岡沢裕行)

スタンレーレディスで通算2勝目を挙げた稲見萌寧(撮影/岡沢裕行)

稲見選手のスタッツを見てみると、特筆しているのがパーオン率。最終日はパーオン率はなんと100%! 2日間平均でも約80%と驚異的な数値です。

ここまで高いパーオン率を叩き出せた理由は、もちろんフェードで攻めるドライバーショットでフェアウェイの良い位置からセカンド以降を打てているというのも大きいですが、やはりアイアンショットの精度の高さ。

開催コースの静岡県・東名CCはグリーンのスピードが速く、とくに富士山からの順目は速い。ピンの位置によっては狙いどころが狭い難グリーンなんです。そんなセッティングを、2日目ノーボギーで回ったという事実からも、稲見選手は非常に高い精度でバーディチャンスを狙える狭いエリアにボールを残せていたことがわかります。

稲見選手のアイアンショットは若干左方向に出してターゲット方向に戻ってくる、ストレートに近いフェードを持ち球としてマネジメントし、逆球が出づらくミスの幅が狭い弾道と言えます。加えて、アイアンでフェードを打とうとするとダウンブローの度合いが強くなり、結果としてスピン量が増える、という効果もあります。

実は稲見選手を指導する奥嶋誠昭コーチによれば「少し球が強くなり過ぎていて、グリーンでボールが止まらないことが多かったので、ちょうど強い球になり過ぎないような練習を取り組んでいた」そう。コーチの指導がバッチリはまったことで、しっかりグリーン上でボールを止めることができるようになったようです。

アップダウンの激しいコースでも距離感がまったく狂わない

もうひとつ、特筆すべき点がライへの対応力です。東名CCはアップダウンの激しいコースで、傾斜地からのショットの精度が試されることになるのですが、稲見選手はライが変わっても距離感が全然狂っていませんでした。

とくに最終日の上がり4ホールのうち15、17、18番で稲見選手はバーディを奪っていますが、15番は打ち下ろし、17番は難易度の高いパー4でセカンドが左足下がり、18番は3打目が打ち上げ。打ち上げと打ち下ろしが目まぐるしく交錯するため、プロでも距離を合わせるのが難しいのですが、きっちりパーオンしてくるのは見事です。

画像: 打ち上げ、打ち下ろしと目まぐるしくライが変わっても距離感を乱さずパーオンを成功し続けるショット精度の高さを見せた稲見(写真は2020年のデサントレディース東海クラシック 撮影/大澤進二)

打ち上げ、打ち下ろしと目まぐるしくライが変わっても距離感を乱さずパーオンを成功し続けるショット精度の高さを見せた稲見(写真は2020年のデサントレディース東海クラシック 撮影/大澤進二)

これは奥嶋コーチと取り組むスウィング計測と研究、そして稲見選手自身がスウィングのメカニズムを理解していることも大きいでしょう。もちろん、1日10時間と故障が心配になるほどの練習量をこなす稲見選手自身の努力と、それを継続できる強い信念、良い意味での芯の強さがあったからこそです。

上がり4ホールで3バーディを決めてトップに追いつき、そのまま勝ち切る丹力はさすが稲見選手といったところです。プレーオフで、バーディを決めてガッツポーズする場面などは、去年初優勝を遂げた「センチュリー21レディス」を思い出しました。3勝目、4勝目と今後の活躍にも引き続き注目していきたいですね。

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