男子プロ並みにクラブにこだわる女子プロがいると聞いて
植竹希望(うえたけ・のぞみ)は、1998年7月29日生まれ、東京都出身の22歳。今季からレギュラーツアーに本格参戦し、最高順位は6位タイ。パーオン率78.1%で2位と抜群のショット力を武器に、ステップ・アップ・ツアー開幕戦「rashink×RE SYU RYU/RKBレディース」では見事勝利も挙げている。
そんな彼女が「男子プロ並みにクラブにこだわっている」という情報を入手した編集部が本人を直撃してみると……「グリップの(下巻き)テープの巻き方、バランス、ライ角がちょっとでもズレているのがいやで、ひと月に1回はチェックをしています」と、想像以上に強いこだわりがありそうな回答が返ってきた。
「縦巻きではなく絶対に螺旋巻き」と下巻きテープの巻き方から絶対的なこだわりがあるようだ。ウワサは本当だった。
クラブセッティングにもこだわりが滲む。女子プロでは極めて珍しい4番アイアンまで入れている得意なクラブのアイアン(ヤマハRMX020)は“番手ずらし”を行っている。ゴルフ工房などで、ギアにこだわるゴルファーがよくやるチューニングのひとつだ。
「アイアンのシャフトは1番手ずらして入れています。7番アイアン用のシャフトを8番アイアンに入れて、というようにピッチングウェッジから4番アイアンまで純正品に比べて0.25インチだけ長めに作っています。そうすることでしなりが少しだけ大きくなって柔らかく感じるんです」
続けて、4番アイアンまで入れる理由についてはこうだ。
「一番はスピンコントロールがしやすくて、左右に曲げやすいからです。アゲンストのときは高さを抑えて強い球が打てるし、フォローでもフェースを開いてボールをすくって打てたりするので普段はアイアンを入れています。雨のときは4番アイアンを抜いてユーティリティを入れていますけどね」
そんな植竹が14本のクラブを選ぶときに最も大事にしていることは「クラブの流れですね。ドライバーからウェッジまで同じスウィングで打てるクラブに作ってもらっています。だからこそショットの調子がいいのかもしれません」と、パーオン率78.1の秘密はクラブセッティングにもあることを教えてくれた。
そして、植竹の場合はこのクラブの流れを揃えるまでの過程も面白いのだ。
「最初に軽い状態でクラブを作ってもらって、自分で鉛をちょっとずつ貼って打ってたしかめていきます。鉛を貼る位置だけでも変わるので、練習場でずっと剥がして、貼って、剥がして、と繰り返していっています(笑)。これをやってると『変なやつ』と言われることもあるんですけど、私にとって凄く大事な作業なんですよね」
クラブのことはメーカーの担当者やコーチなどにお任せ……という女子プロは決して少なくないが、植竹の場合はこの地道な鉛チューンを自ら行うからこそ、クラブを信頼し自信を持って打てるのだ。
「小学生4年生から中学生まで(千葉県松戸市にある)梨香台ゴルフガーデンというところでずっと練習していたんです。そこのクラフトマンさんがグリップの内巻テープを1回巻いたクラブ、2回巻いたクラブ、縦巻きにしたクラブ、ライ角が立っている、寝ているクラブ……というように色々なクラブを打たせてくれたんですよね。それで感覚が養われて、知識もついていったのかなと思います」
ギアとは少し異なるが、数百万円という高額な弾道計測器「トラックマン」も今年自分で購入。それも、「高校2年生のときに存在を知ってから、ずっと貯金していた」というから驚く。
ゴルフが好きだからこそ、何事も人任せにせず、貪欲に知識を吸収してきたからこそ今があるのだろう。今週開幕する「富士通レディース」に出場する彼女がどう活躍するか。ブレーク直前の黄金世代・植竹希望に注目だ。
そして実はこの植竹にはまだまだ興味深いエピソードがある。それはまた追って、お伝えしよう。