タイガーやJ・ローズなどスター選手が口を揃える“いい道具”の条件
秋は新しいゴルフクラブの発売が目白押し。クラブを買い換えようかどうかと悩む季節でもあるが、それは世界ツアーで活躍するトッププレーヤーも同じである。とくに2020年は通常初夏から始まる新製品のツアー供給がコロナ禍で3カ月遅れのスタート。ほぼ一般市場への試打クラブ投入、発売と同じようなスケジュールで動いている。
それでもタイトリストのニュードライバー『TSi2』、『TSi3』などはツアー供給した初戦で約半数の契約プロがこれにスイッチ。試合を重ねるごとに使用選手が増やしているというから、メーカーとしては一安心だろう。
ピンの『G425』シリーズ、スリクソンの『ZX5』、『ZX7』、ブリヂストンの『TOUR B X』など他ブランドのアスリート向けニュードライバーのツアーローンチも相次いでいるが、こちらのツアーでの評判も軒並み上々。最新クラブ事情に詳しい複数の有識者から「先に発売されているテーラーメイドのSIM、キャロウェイのマーベリックシリーズも合わせ、2020年はドライバーの当たり年!」との声も上がっているほど、いつになくニュードライバーに注目が集まっているシーズンである。
さて、それでは何を基準にニュードライバーを評価し、購入候補を絞り込めばいいのか。それについて話を進めていきたい。
ゴルファーが新しいドライバーに求めるものは、
・最大飛距離アップ
・平均飛距離アップ
・安定性
・心地よさ
・操作性
・構えやすさ
など多岐に渡ると思うが、トッププレーヤーに“このクラブ(あるいはボール)に決めたポイントはどこ?”と問うと、この中にない回答が返ってくることしばしばある。そのひとつが「自分がイメージした“ウインドウ”にしっかり入っていってくれる」というものである。
一時期、本間ゴルフと契約していたジャスティン・ローズもその決め手を「ボールが窓枠をきれいに通過してくれる」と言っていたし、タイガー・ウッズもブリヂストンのゴルフボールに決めた理由を「ウインドウを外さない精度がある」と表現していた。どうやら、トッププレーヤーには、ボールが飛び出していった先の空中に、イメージ上の“窓枠”のようなものが存在し、そこを通過するかどうかがナイスショットの基準となっているようなのである。
そんな感覚を持ってアドレスに入ったこと、あなたはあるだろうか? 果たして、窓枠とは空中のどこにイメージされているものなのだろうか。みんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロの資格を持つ中村修はこう説明する。
ウインドウを意識することで、一打への集中力が高まる
「よくパッティングではライン上のボール近くに“スパット”を見つけ、それに対して打ち出していくと方向が狂わないと言われますが、ドライバーやアイアンショットでもまったくこれと同じなのです。ターゲットに対してどういう球筋で狙うかを決めたら、ボールが飛び出していく空間に窓枠のような通過目標を設定するのです。ショットの場合は、パットと違って空間に打ち出す3Dの感覚なので方向だけではなく高さが重要。だから空中に目標をセットすることが大切になってくるわけです」(中村)
要はその枠を通過するれば、ナイスショットになるということ。狙い通りの弾道が作り出せたかどうかをトッププレーヤーはボールを打ち出した瞬間にチェックしているわけだ。
「イメージする窓枠の大きさは、おそらくトッププレーヤーでも差があるでしょう。同じ選手でも好調な時はより小さい枠、調子が上がらない時は枠の付け方もファジーになるかもしれません。しかし、大切なのは一打一打、しっかりと弾道イメージを膨らませ、その枠に合わせて構え、枠に向かってボールを打ち出すことに集中すること。その丁寧さがナイスショットにつながるのです」(中村)
狙いの定まらないアマチュアだからこそ、このウインドウにボールを通す意識が必要だと中村はいう。ショットが定まらないなら窓枠を手前に、大きくイメージし、とにかくその中を実際の打球が通るかどうかをチェック。クリアしたら枠を少し遠くに、小さくしてまたその中にボールを通すように打っていく。これを練習場でもコースでも習慣づけることで、ショットのイメージ力、集中力を高め、何よりも丁寧に一打を放つことが可能になるのである。
新製品の試打となると、どうしても飛距離やミート率といった数字が気になってしまうが、その前に狙った方向、高さにボールを打ち出せるかどうかが実際のゴルフでは重要。思っても見ない方向に300ヤード飛んでも、実際、面白くないはずである。狙いを定めて、その中に打ち出して行こう!