PGAツアーメンバーたちのドライバー平均飛距離は年々伸び、今や300ヤード超えが当たり前の環境になっている。しかもその流れは未だ継続中だ。2020年はブライソン・デシャンボーが肉体改造を経て大幅な飛距離増に成功したことが大きな話題を呼んだ。2019-20シーズンの平均飛距離は322.1ヤードで、もちろん1位だ。
こういった飛距離増への取り組みに関して、フィル・ミケルソンは「私の時代には実現可能ではなかったでしょう」とPGAツアーのインタビューで答えている。
「なぜなら私のキャリアの最盛期には、まだスウィング計測器が存在しませんでしたからね。スウィングや弾道に関する多くのことは、ボールを見て感じて、頭に描いて理解するしかなかったんです」(ミケルソン、以下同)
たとえばインパクト時の感触で「ああ、スピンがかかりすぎた。だから吹け上がったんだな」とわかっても、今のような計測の精度はない。一方、今日ではデシャンボーをはじめほとんどの選手がドライビングレンジに計測器を持ち込み、データを確認しながら練習を重ねている。
もちろんクラブやボールなど道具の進化もあるにせよ、一番影響が大きかったのはスウィングやそれによる結果を精密に測る方法が確立されたこと。だからこそ、今日の300ヤード超えが当たり前、という環境が生まれたというわけだ。
「現在180マイル/時(約80.5m/s)のボール初速でヒットしている多くの選手たちは、ブライソンに追いつくために190マイル/時(約85m/s)まで初速を上げることを迫られています」
そう語るミケルソンだが、その一方でボール初速の追求はそこまで必要なのかを疑問視している。
「もしボール初速190マイル/時を出せても、多くのコースではその利点を活かすことはできません。コースに数ホールしかないドッグレッグホールでは、圧倒的なボール初速と飛距離がプレーを助けてくれるかもしれませんが、ほとんどの選手はすでに、ボール初速が182~185マイル/時(81.3〜82.7m/s)での飛距離が(プレーにおいて)最適だと感じているように思います」
とはいえ、コース設計を圧倒的な飛距離でスルーし、全米オープンを制したデシャンボーの姿も記憶に新しいところ。ミケルソンの分析が果たして正しいのかどうかは、そう遠くないうちにわかるかもしれない。