今年で2回目の開催となるZOZOチャンピオンシップで通算3勝目を挙げたパトリック・カントレー。そんなカントレーの安定感のあるスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説した。

下半身の回転重視のスウィング

カリフォルニア州・シャーウッドCCを舞台に開催されたZOZOチャンピオンシップの第2回大会。初日から終始スコアの伸ばし合いとなった今大会を制したのは、トータル23アンダーを叩き出したパトリック・カントレーです。

画像: ZOZOチャンピオンシップで通算3勝目を挙げたパトリック・カントレー(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

ZOZOチャンピオンシップで通算3勝目を挙げたパトリック・カントレー(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

カントレーと言えば、日本の松山英樹と同世代で現在28歳。アマチュア時代には55週連続で世界アマランク1位キープという偉業も達成していましたね。今大会でPGAツアーは通算3勝となりました。

カントレーのプレースタイルを一言で表現するなら、オールラウンド。すべてのレベルが高水準です。アマチュア時代からバツグンのショット力を持っていましたし、アプローチも上手で、あまり崩れないプレーヤーと言えます。

今大会でもドライバーで平均290.1ヤード飛ばしながらフェアウェイキープ率は75%。セカンドショットが打ちやすいやすい場所を狙いながらも飛距離をしっかり確保している、非常に安定感のあるスウィングですね。

まずはアドレスの形(画像A左)を見てみましょう。左手のグリップはややストロング気味。両ひざの間が開いていて、両足と腰のラインで台形を描くような、どっしりとした安定感のある下半身の構えが特徴的です。また、高めにティアップしていることからも、アッパー軌道でのインパクトを目指していることが読み取れますね。

画像: 画像A:アドレスでは下半身はどっしりと構え(左)、右への体重移動はあまりせずその場で捻転してトップまでクラブを上げている(右)(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

画像A:アドレスでは下半身はどっしりと構え(左)、右への体重移動はあまりせずその場で捻転してトップまでクラブを上げている(右)(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

アドレスとトップ位置(画像A右)を見比べると、バックスウィングでの両ひざの動きもさほど大きくありません。トップでのフェースの向きは、若干シャット気味になっていますがほぼスクェアです。どっしりとしたアドレスやひざの動き具合からもわかる通り、カントレーは重心を大きく移動させずに下半身の回転を重視して打つタイプであることがトップの形からも見て取れますね。

そして切り返し(写真B左)では、下半身がアドレス時の形に戻ってきています。そのまま下半身の回転力がスウィングをリードして、そのあとに上半身やクラブが下りてくるんです。

切り返しのときに下半身が動き過ぎて打点がバラついてしまう方は、切り返しから少しガニ股になるようなカントレーの動きを採り入れると、前傾が崩れて腰が前に出る動きを防ぐことができるので、ぜひ参考にしてみてください。

画像: 画像B:切り返しで下半身がアドレス時の形に戻り(左)、そのまま腰をターンさせてインパクト(右)(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

画像B:切り返しで下半身がアドレス時の形に戻り(左)、そのまま腰をターンさせてインパクト(右)(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

インパクト(画像B右)を見ると、体の左サイドへの体重移動は控えめで、むしろ体重がやや右足側に残った状態ですよね。これはティアップを高くしていることからも、レベルからアッパー軌道で打つための動きでしょう。

左の壁といいますが、左サイドをしっかりターンしきっていることで作られています。さらに左手首に注目してみると、アドレスで作ったストロンググリップの角度がキープされているので、フェースローテーションがゆるやかでインパクトゾーンが長くなっています。この2点からも、あくまでも飛ばしのエネルギーの源は下半身の回転力であることが見て取れます。

フォロー(写真C)を見ると、右足のかかとは浮かないベタ足の形。下半身はしっかりとターンしていますが、頭もしっかりと残っていて、スウィングの軸が写真からでもイメージしやすいです。回転運動のスウィング軸がブレないからインパクトも安定する。これがカントレーが安定したショットを打てる秘訣でしょう。

画像: 写真C:フォローでも頭の位置がティアップした位置よりも後方に残った状態をキープしている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

写真C:フォローでも頭の位置がティアップした位置よりも後方に残った状態をキープしている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタル 撮影/姉崎正)

スウィングバランスがすごく良くて、どこか体の一か所に力がたくさん入るわけでもなく、下半身の回転によって生まれる力が、上半身、クラブへつながっていき、スムーズに振り抜けていますね。

しかも、飛距離に関してもまだまだ底力があります。スウィングを見る限り、思い切り振って飛ばしている感じではないんですが、それでも300ヤード以上飛ばす場面もありました。今大会のようにスコアが伸ばせるコースでの試合で、安定したドライバーショットでスコアを伸ばし続けられるのは非常に大きな長所と言えるでしょう。

プロ転向後は背中のケガによって戦線離脱を余儀なくされ、2016年には親友であり相棒のキャディであったクリス・ロスを事故で亡くしという悲しい出来事を立て続けに経験したカントレーでしたが、それでもゴルフへの情熱は消えず、乗り越えてプロの世界に戻ってきてくれました。

同世代の松山とともに、これからのPGAツアーを担っていく選手の一人であることは間違いないでしょう。カントレーの活躍に今後も注目です。

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