芯を外しても方向性がブレない。飛距離も落ちにくいという「大慣性モーメント」のドライバーにはやさしく飛ばせるという宣伝文句が躍るが、一方で球がつかまりにくいとか、上手く使いこなせないという声も聞く。ギアライター・高梨祥明による「大慣性モーメント」ドライバーと上手に付き合うためのヒント。

打点が多少ズレてもそこそこ飛んでくれる。それが大慣性モーメントヘッドの“やさしさ”

ミスヒットしたのにまるで芯で打った時と同じようにボールが飛んでいく! それが慣性モーメントを最大化した最新ドライバーのメリットである。大型メタルヘッドのキャロウェイ「ビッグバーサ」(91年)の登場以来、ドライバーヘッドは年々大きく変化してきたが、これもひとえに慣性モーメントをアップさせるためだ。

では、ヘッドの慣性モーメントを大きくすると、なぜミスヒットしたのにまるで芯で打った時と同じようにボールが飛んでいく! のだろうか。

それは芯を外してもインパクトの衝撃でフェースの向きが変わりにくいからである。慣性モーメントが小さければ芯以外でヒットした時にフェースの向きが変わる。トゥ寄りで打てばフェースが開き、ヒール側なら閉じ、下目ならロフトが立ち、上目ならロフトが増える。ゴルフボールはこうしたインパクトで起こる瞬間的なフェースの傾き(向き)の変化によって、バックスピンやサイドスピンが変わり、同時にエネルギー効率も悪くなることから、“芯を外すと曲がる! 飛ばない!”という状態になってしまうのだ。

慣性モーメントを大きくしていけば、芯を外してもインパクトでのフェースの傾き(向き)が変わりにくく、初速も落とさずブレのない弾道で飛ばしていける。つまり、芯で打てた時と同じようにボールが飛びやすいわけである。ちなみに多くのゴルフメーカーが公表したり、ゴルフメディアが伝えている「慣性モーメント」とは、たいていヘッドの左右に対するもの。重心よりもトゥ、あるいはヒールに多少ズレて当たっても、この数値が大きければ大きいほどブレずに飛びやすいですよ、といっているわけである。

画像: ピンの最新ドライバー「G425MAX」も慣性モーメントを大きくすることでヘッドのブレを抑えたモデル

ピンの最新ドライバー「G425MAX」も慣性モーメントを大きくすることでヘッドのブレを抑えたモデル

(補足)ゴルフのルールでは慣性モーメントの上限値が5900g・cm2と決まっており、最新ドライバーはすでにこの上限に達しつつある。たとえばPINGの最新ドライバー「G425 MAX」などは慣性モーメント(左右)が5500g・cm2(編集部調べ)に迫っており、ほぼほぼ“MAX”といえる状況にまでなっている。

狙ってない方向に真っすぐ飛んでいく!? それが大慣性モーメントヘッドの“難しさ”

ミスヒットしたのにまるで芯で打った時と同じようにボールが飛んでいく! なんて大慣性モーメントヘッドはやさしいんだ! という声があがる一方で、「ここまでくると逆に難しく感じる」というゴルファーも少しずつ増えてきているようだ。

なぜなら、大慣性モーメントヘッドは打点をズラしてもブレずに飛んでしまう、からだ。前述したとおり、大慣性モーメントヘッドのメリットは、芯以外でヒットしてもインパクトでフェースの傾き(向き)が変わらないことにある。しかし、ゴルフ歴が長いゴルファーの中には、あえて芯で打たないことで意図的に弾道を変えて攻めたい! というニーズが今なお多く存在する。

例えばヒール目で当てればフェード弾道が打ちやすく、トゥ寄りの上目で当てれば低スピンのドローボールが打ちやすい。また、あえてフェースの下目で打てばバックスピンが増え、上目で打てばスピンが減らせる。こうしたかつては出来た“弾道コントロール”が、今はやろうとしても出来ない。それが大慣性モーメントドライバーの特徴でもあるのだ。やりたいことができない、つまり“難しい”のである。

また、大きな慣性モーメントを目指せば、ヘッド体積が大きくなり重心距離が長くなる。昨今、低スピン化のために浅目の重心深度にするモデルが増えているが、重心が浅く、長くなれば重心角が小さくなる。加えてヘッド重量は重めの傾向。大慣性モーメントを追えば、“つかまりにくく、振り遅れやすいヘッド”になる危険性が高くなる。これも“ミスヒットにやさしい”最新ヘッドの宿命なのだ。

大慣性モーメントの“やさしさ”は、インパクトでのフェースの傾き(向き)を維持することにあるが、そのやさしさを享受するには、最低限、狙った方向にフェースを向けてインパクトしなければならない。しかしながら、最新ドライバーでは人によっては振り遅れたり、開いたフェースを閉じることができず、右プッシュやプッシュスライスを頻発してしまう場合も多くなっているのである。

振り遅れやすい、小手先の力でフェースを閉じにくい、打点をズラしても弾道が変わらない。こういう観点でみれば、大慣性モーメントドライバーはとても“難しい”。もちろん、こうしたことはゴルフメーカーも十分に想定しており、慣性モーメントアップを図りながらも、つかまり具合の異なる重心設計のヘッドを2〜4つ用意し、可変ウェイト、可変シャフトスリーブ、シャフトオプション、フィッティングなど、多くの選択肢(調節の機会)を用意して、ゴルファーごとに最適なフェースの向きでインパクトできるようにしているのだ。

画像: ピンのG425シリーズで言えば、G425MAX(左)に加え、重心がフェース寄りにあるG425LST(中)、ヒール寄りの重心設計のG425SFT(右)の3モデルがラインナップされている

ピンのG425シリーズで言えば、G425MAX(左)に加え、重心がフェース寄りにあるG425LST(中)、ヒール寄りの重心設計のG425SFT(右)の3モデルがラインナップされている

ある意味、大慣性モーメントヘッドの隆盛の時代では、スクエアにインパクトできる「スキル」が求められる。スキルとはスウィングでもあり、クラブ(スペック)に対する知見である。普通に力任せに振ってはいけない。狙った方向に打ち出すには工夫が必要だ。

こうしたことが難しい、煩わしいと判断されれば、ゴルファーがある程度スウィングの中で感覚的に操作しやすい適度な慣性モーメントヘッドが「選択肢」の一つとして、今後出てくるはずである。大慣性モーメントも選択肢、そういう時代になればいちばんである。

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