ドライバー、3番と5番ウッド、アイアンセットにパター。かつてシンプルだったクラブセッティングは、ドライバーの大型化、ユーテリティに単品ウェッジ、飛び系アイアンの登場といったことにより、複雑化の一途を辿っている。選択肢の増加により複雑になったクラブ選びの現状を、ゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロが分析。

早いもので、2020年もあとわずか。今年のゴルフクラブを振り返ってみると、多くのヒット作が登場した反面、クラブ選びがさらに難しくなったという感想が拭えない。古い話で恐縮だが、四半世紀前まではユーティリティは存在せず、ウッドは3本、アイアンは多くの場合、同じモデルで3番からSWまでだった。選択の余地があまりない時代だった。

ドライバーとスプーン、バフィ、クリークは大きさの差もそれほどなく、形状は似通っていた。アイアンは上から下まで統一感があり、一応、同じようなスウィングで打てるという建前だった。必要な技術もクラブ選びも選択肢がない分、よりシンプルでわかりやすかったように思う。

翻って、現代のクラブを考えると、スプーンの2倍以上のヘッド体積があるドライバーには大きな存在感があり、FWがあって、その下にウッドともアイアンとも似つかない形状のユーティリティがある。その下のアイアンの番手が少なくなった一方、PWから下はより小ぶりで複雑なソール形状をした単品ウェッジを組み合わせる。

近年は、同じ番手でもロフト角を立てるストロングロフト化が進んでいて、同じ7番アイアンでもモデルによって、ロフト角に10度もの差があることもある。これはもう、おなじMサイズでも服によってサイズ感が違うのと同じように、自分がその番手で打ちたい飛距離のアイアンを選べば良いと思うのだが。さらにややこしいことに、ここ1、2年の傾向で、同じロフト角でも、モデルによって飛距離差が大きくなるケースが増えている。

画像: クラブ選びの選択肢が増えたことで、選ぶこと自体が難しくなっている……?

クラブ選びの選択肢が増えたことで、選ぶこと自体が難しくなっている……?

たとえば、ロフト角30度の7番アイアンでも、より飛ぶモデルとスピンが入って止まるモデルがあるのだ。市場のアイアンには、ロフトが立っている割に飛距離が出ないものもあれば、ロフト角が寝ている割に飛距離が出るものがある。

単一素材で作られていた時代と違い、現代はフェースに高強度素材、ソールには高比重ウェイト、中空構造の内部には衝撃吸収用の樹脂が挿入されるなど、アイアンの構造が複雑化している。それらの構造によって弾道の質も変化するため、単にロフト角だけでは飛距離も球の高さもスピン量も簡単に判別できなくなっている。もちろんロフト角は飛距離を決める大きな要素ではあるが、それだけではそのモデルがどれだけ飛ぶか、どんな飛び方をするのかはわからなくなっているのだ。

これはアイアンに限らず、FWやユーティリティにも見られ始めている傾向だ。飛びを重視して低スピン性能を高めたモデルと、操作性やグリーンに止まることを重視して、ややスピンが入る性能を持たせたモデルとの性能差、設計思想の差を感じることが多くなった。

難しいと感じるのは、それがカタログなどのメーカーのインフォメーションからでは、なかなか見えてこないことが多いからだ。いまだに「飛び系アイアンなんて、ロフトを立てているだけ」といった認識のゴルファーも少なくないのだが、それはおそらく打ち比べたことがないか、打っても違いを判別するだけの技量や経験がなかったからではないかと思う。しかし、そうしたリテラシーをあまねくユーザーに求めるのは厳しいのではないだろうか。

昔なら、アイアンセットだけで良かったものが、ユーティリティが入ったことで、違うスウィングが必要になるかもしれない。同じシャフトを装着しても、ヘッドの性格が大きく違うので同じように振れない事が多い。最近は、ドライバーでもその傾向が顕著で、気に入っているシャフトを他のドライバーに装着したら、結果がどうもイマイチみたいなことが頻繁に起こる。スタティックな数値やありきたりの商品説明では、判断できないことが以前よりもずっと増えてきている。

では、昔のクラブのほうが良いのかというと、そんなことはなくて、おそらく現代のクラブを使ったほうが結果は良くなるだろう。大型ヘッドのドライバーは曲がりにくいし、飛距離もでる。ロングアイアンよりもユーティリティの方が格段にやさしいし、最新の単品ウェッジを使えば、セットのウェッジ時代には考えられなかった、強いスピンをかけることも出来る。

選択肢が広がった分、クラブ選びはより複雑で難しいものになった。近年、フィッティングや対面販売が増えているのもそうした傾向が理由のひとつにあるはずだ。しかし、上手く活かせば大きなパフォーマンスの向上も見込めるし、そう思うとクラブ選びはより面白くなったと言えるだろう。来年は、より複雑になった現代のクラブ選びのコツを色々と紹介していきたいと思う。

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