ポイントは「ボールに当てに行く」意識をどう抑えるか
アマチュアゴルファーの悩みであるドライバーのスライス弾道だが、「まず、スライスの主な原因は2つあります」というのは、渋野日向子を始め、多くのプロ、ジュニアを指導する青木翔コーチ。
「スライスの原因は、【1】ダウンスウィングがカット軌道になる、【2】インパクトでフェースが開いて当たる、の主に2つですが、一般のアマチュアの方によく見られるのは【1】のカット軌道です。切り返しで右肩が前に出てクラブが外から入ってくることで、カット軌道になるケースが多いんです」(青木、以下同)
多くの場合は「スライスを直すにはダウンスウィングで右肩を前に出さないようにしてください」とアドバイスをすることで練習場ではスライスが出なくなるというが、一方「実際にコースに出て打ってみると、ほとんどの方はスライスは直っていないんです」と青木コーチ。
なぜ、練習場で意識をしながら打てば右肩が出ることを抑えることができるのに、コースでのショットではそれを抑えられなくなるのだろうか。それは「ゴルフスウィングに潜む厄介な動きが出てしまうから」だと青木コーチは指摘する。
「実際のラウンドでのショットの時には、ほとんどの方が本能的にボールに当てにいったり、合わせにいってしまうんです。だからいくら練習で右肩が前に出る動きを直しても、この『ボールに当てに行く』意識を何とかしないことには、根本的なスライスの原因を改善することにはならないんです」
では、「ボールに当てに行く」本能的な動きを抑えるにはどうしたらいいのだろうか。
「ドライバーショットの場合、ティアップが(体の中心線より)左にあるじゃないですか。だからボールに対してアドレスをすると、どうしても体重が左足にかかってしまい、ダウンスウィングでは右肩が前に出て上からクラブがカットに入りやすくなるわけです。この対処法としては、アドレスする時にドライバーのヘッドを、ボールから離して体の中心線(の延長上)に合わせるように置いてください。そしてスウィングをする時には、ボールに当てに行こうとせずに、この体の中心線に向かってクラブを振って行くイメージでクラブを振っていきます。そうすると右肩が前に出なくなるので外からのカット軌道にならずに、内側からのインサイド軌道になってくるので、スライスは出なくなります」
この中心線に対して振るスウィングを身に付ける段階で大事なことは「ナイスショットをしようとしないこと」なのだと青木コーチ。
インパクトの意識をボールよりも手前に向けることで、ボールに対してクラブを合わせに行かずに振り抜くことがこの打ち方のポイントなのだが、「良い球を打とう」と思った瞬間に、またボールに合わせにいく動きが出てしまうからだ。
インパクトで当てる意識が消えるまではナイスショットを打とうとせずに、とにかく中心線に対して振ることに専念していると、そのうちに自然にカット軌道が出なくってスライスも収まってくるはずだ。
それでも、本能的に上からボールを打ちに行ってしまうという人に青木コーチから、さらに強力な矯正法の提案だ。
「どうしても当てにいく、クラブが上から入るという方は、グリップをする時に右手の親指と人差し指を伸ばして握ってみてください。右手の親指をグリップにギュッと乗せて握ると、親指に余分な力が入るとスウィング中にクラブフェースが開きやすくなるんです。そこで、右手親指と人差し指を真っすぐ伸ばしグリップから浮かせて握ることで、スウィング中のクラブの無駄な動きを抑えるのです。さらに、この2本の指を伸ばして振ることで腕と肩の無駄な力も抜けるので、右腕で上から叩きにいくカット軌道が収まるはずですよ」
まずは「右肩を前に出さない意識を持って振る」ことから始め、それでも駄目なら「体の中心線に対して振る」スウィングをやってみる。それでも駄目なら「右手の親指と人差し指を伸ばして握る」。この3ステップの対処法でスライス球を封じ込めよう!
取材協力/PGST 写真撮影/野村知也