2020年のドライバー市場を振り返ると、テーラメイドやピン、キャロウェイをはじめとする海外ブランドのドライバーが人気を集めていたが、果たして2021年に国内ブランドの復権はあるのか。その糸口をギアライター・高梨祥明が考えた。

米国ブランドドライバー優位に変化なしテーラー、キャロウェイの新作が市場をリード

2021年のゴルフクラブの“傾向予測”。まずはドライバーだが、これはいわゆる正常進化が続くと思われる。簡単に言えば、最大飛距離の追求とその飛距離をなるべく広い打点エリアで達成すること。このゴールに向かって新たな“手段(テクノロジーといわれるもの)”が各メーカーから登場してくるという図式には何ら変化はないと思われる。

画像: 2020年に発売された左からテーラーメイドSIM MAX、ピンG425マックス、キャロウェイ マーベリック(左から)

2020年に発売された左からテーラーメイドSIM MAX、ピンG425マックス、キャロウェイ マーベリック(左から)

■ルール内ギリギリ反発の範囲拡大
ボールの初速制限、フェースの反発制限はゴルフのゼネラルルールでその上限が定められているから、ルール上限ギリギリの反発性能をフェースの広範囲に広げることが、ここ数年の開発トレンドとなっている。

「部分肉厚フェース」「カップフェース」「2本の柱」「Wクラウン」「フェースを裏側から支える構造」など。様々なフェース裏の肉厚テクノロジーやフェース周りの剛性を高めるテクノロジーがあるが、これらの目的は同じ。フェース広範囲でのギリギリ反発の実現である。ここに開発の余地がまだあることから、各メーカーは新しい手法として、〇〇テクノロジーをプッシュしてくるだろう。新テクノロジーではあるが、目的は同じである。

■慣性モーメントの拡大
芯を外してしまった時の寛容性のアップも、正常進化の一つ。具体的には「慣性モーメント」をヘッドの左右だけでなく、上下方向にも大きくしていくのが近年の開発トレンドだ。ゴルフルールではこの慣性モーメントの数値も5900g・cm2と上限が決められており、開発的なゴールもすでに見えている。とくにヘッド左右の慣性モーメント値は、現在販売されているドライバーにも5700g・cm2を超える高慣性モーメントモデルが存在し、あと約200g・cm2性能アップしたところで、実感できる寛容性のアップにはならないと思われる。

ヘッド左右の高慣性モーメント化は、すでに終点を迎えており、2021年以降は「ヘッド上下での慣性モーメント拡大」、あるいは「使い手に合わせた慣性モーメントの適正化」、高慣性モーメントヘッドの「つかまりバリエーション」の拡充にチカラが注がれるはずである。

個人的には振りやすさ向上のため、「ヘッド重量」の選択ができるようになって欲しいが、ヘッドの軽量化は慣性モーメントのダウンにつながる要素。2021年にライト級ヘッド(185g前後)が登場することはまずないだろう。高慣性の重ためヘッドをいかに振りやすくするかというところで、シャフトの軽量・高剛性化、カウンターバランス化、長さの選択肢拡充などがますます活発になると予想される。

いずれにしても、テーラーメイド、キャロウェイの新製品登場が噂されており、すでに好評のピンのG425、タイトリストTSiとともに、米国ブランドが日本のドライバー市場を引っ張っていくことは確実である。

日本人が正しく日本ブランドを評価する。それが明日のニッポン専用ドライバーを作るカギ

2020年のドライバーをめぐる市場状況をみれば、テーラーメイド、ピン、キャロウェイが高いシェアを誇り、ここまで市場を牽引してきた「ゼクシオ」の勢いにやや翳りがみえているのが気になるところである。今までの「ゼクシオ」ユーザーがピンに流れている、とも言われているのだ。

「ゼクシオ」は決して海外ブランドが作った開発トレンドに引っ張られて、ここまでやってきたわけではない。基本的には日本人ゴルファーがどんなドライバーならもっと気持ちよく振れ、飛距離を伸ばしていけるのか? を考え続けてきたブランドだ。ゆえに、慣性モーメントの値も最大ではないし、低スピン化のために浅重心にしているわけでもない。つかまり度を示す重心アングルも決して“最大級”ではないのだ。

ルール内ギリギリ反発の範囲拡大については、もともとゼクシオが独自のカップフェースでこの分野をリードしてきた関係で、海外ブランドと一線を画すとはいえないが、とにかく最大数値を追うのではなく、日本人が使ってどうかを考えて作られている、今となっては貴重なブランドである。それだけに対象ゴルファーたる日本人が、これを打たずに海外ブランドに流れていってしまっている風潮は、大いにさみしい気がするのである。

画像: 外国ブランドのドライバーとは一線を画し独自の路線を歩み11代目となったゼクシオイレブン(写真/三木崇徳)

外国ブランドのドライバーとは一線を画し独自の路線を歩み11代目となったゼクシオイレブン(写真/三木崇徳)

使わずとも一回は打って、「ちょっとここが不満」というフィードバックを残すようにすれば、今後も海外ブランドとは一線を画す日本ブランドならではのドライバーが登場する“芽”が残るのになぁと思う次第である。

現在のドライバー市場を俯瞰してみると、明らかに米国ブランドが市場をリードしており、劣勢の国内ブランドが“売るために”同じようなドライバーを一生懸命開発しているように見える。手法(テクノロジー)は違えど、目的は同じ、そんなドライバーばかりが店頭に並んでいるのが現状なのだ。グローバル化といえば聞こえはいいが、世界と同じような製品を作っていて、国内ブランドの存在価値はあるのだろうか?

2021年は、いよいよ国内ブランドのドライバーが生き残れるかどうかの瀬戸際の年となるだろう。

「ゼクシオイレブン」(ダンロップ)、「インプレスUD+2」(ヤマハ)、「プロギアRS5」(横浜ゴム)、「TOUR B X」(ブリヂストンスポーツ)など。今ならまだ、日本のゴルファーをメインターゲットにした国内ブランドのドライバーが揃っている。勢いのある米国ブランドドライバーとこれらを打ち比べてみて、その違いや自分にとってどちらが向いていそうかをぜひチェックしてみていただきたい。ゴルフクラブのトレンドを決めるのはゴルフメーカーではなく、ゴルファーなのだから。

画像: 飛ばないゴルフ女子の飛距離がドラコンプロのレッスンで160→180ヤードに!? 一体なにを教わった?【押尾紗樹】 youtu.be

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