世界的に流行を見せる長尺ドライバー
“ゴルフの科学者”ブライソン・デシャンボーが「48インチをテストする」と発言したこでにわかに巻き起こった長尺ブーム。フィル・ミケルソンは47.5インチ、アダム・スコットは46インチのドライバーをすでに実戦投入し、昨年のマスターズを制し現在世界ランク1位のダスティン・ジョンソンも、結局実戦投入には至らなかったものの、オーガスタ攻略に向けて47インチのドライバーをテストしていた。
ブームの火付け役であるデシャンボーは48インチドライバーの実戦投入に向けて現在も調整を進めているというが、昨年の欧州ツアーでは同ツアー1勝のカルム・シンクウィンが先んじて48インチドライバーを試合で使用するなど、すでにプロゴルフ界全体に長尺化の流れが浸透しつつあるというのが現状だ。
プロが採用している以上飛距離面でのメリットがあるはずだが、加えて気になるのは長尺化によって振り心地はどう変化するのか、といった点。そこで46.5インチと48インチ、2種類の長尺シャフトを用意し、プロゴルファー・中村修と堀口宜篤に試打して検証してもらった。
試打に使用するヘッドはコブラの「キングF9」の10.5度、シャフトは46.5、48インチともにUSTマミヤの「アッタスパンチ」の50グラム台、Sフレックスを使用。
シャフトのアッタスパンチに関しては「少しカウンターバランスになっているので、長尺でもある程度振りやすくしてくれるのでは、ということで選びました」とのことだ。
クラブバランスには注意
長尺シャフトを使用する場合も、シャフトが長く、重くなるぶん当然クラブのヘッドの“効き具合”を示すバランスにも気を使う必要がある。ただ長くしただけだとヘッドのバランスが重くなりすぎてしまう。
そこで、ソール後方の10グラムのウェートを外し、フェース側についていた2グラムのウェートを後方に取り付ける調整を加え、46.5インチでクラブバランスD0.5、48インチでD7.5の状態で試打を行った。D7.5は市販品ではありえない、ヘッドバランス“激重”の設定だ。
まずは堀口が46.5インチのドライバーを3球試打。普段はヘッドスピード46m/s、飛距離約275ヤードという堀口だが、飛距離もヘッドスピードもほぼ同じか、少し下がるという結果になってしまった。
【堀口の46.5インチドライバー試打結果】
キャリー245.3ヤード
トータル273.2ヤード
打ち出し角12.4度
ヘッドスピード44.2m/s
ボール初速65.4m/s
スピン量 1794.3rpm
堀口はシャープにボールを叩くタイプのスウィングのため、長尺化したことでリズムがゆったりとなり、結果、長尺の恩恵が受けられなかったようだ。ただ、「長尺なぶんヘッドの入射角が浅くなっているからか、いつもよりスピン量は減っていますね」と堀口。
その一方で、堀口と平均ヘッドスピード、飛距離ともに同程度の中村は、46.5インチドライバーで大きく飛距離を伸ばした。
【中村の46.5インチドライバー試打結果】
キャリー260.2ヤード
トータル285.4ヤード
打ち出し角12.3度
ヘッドスピード46.8m/s
ボール初速69.6m/s
スピン量 2709rpm
単純に、ヘッドスピードが上がり、ボール初速も普段より出ていると中村。
「ヘッドスピード47m/sに迫っているのは驚きました。スペックが合ったこともありますが、たとえばもっとしならせながら打ちたいタイプやヘッドスピードの遅いゴルファーなら、40グラム台のSや50グラム台のRとかでもアリだと思います」(中村)
以前は長尺化するとどうしてもシャフトが頼りなく感じられる傾向があった。ではと硬いシャフトを入れると今度は硬すぎてタイミングがとりにくい。しっかりしなるのに頼りなさのないシャフトの進化は、長尺化の強い味方になりそう。
続いてルール上限の長さである48インチドライバーだとどうだろうか。堀口の結果は、46.5インチの場合と同じ、ほぼ変化なしか、少し飛距離が落ちる結果となった。やはり、強く違和感を覚えたようだ。
【堀口の48インチドライバー試打結果】
キャリー242.6ヤード
トータル269.2ヤード
打ち出し角11.8度
ヘッドスピード42.8m/s
ボール初速64.2m/s
スピン量2032rpm
「まず構えた時に、ボールがかなり遠くに感じますね。長さの影響は当然46.5インチより大きくて、振ってきているのにヘッドが遅れているような感覚があるので、無意識で開いたフェースを戻そうとしちゃいます。数値的には、ヘッドスピードに対して初速は出てますけど、ヘッドスピード自体は上がらず、パッとしない感じです」(堀口)
堀口とは対照的に、48インチでも好結果だったのが中村。288.7ヤードと、290ヤード近い飛距離を叩き出した。
【中村の48インチドライバー試打結果】
キャリー250.2ヤード
トータル288.7ヤード
打ち出し角13.2度
ヘッドスピード47.5m/s
ボール初速70.4m/s
スピン量 2789rpm
「堀口プロの言う通りシャフトが長いぶんボールから遠くに立つので、大型のはずのヘッドがすごく小さく見えます。長い分だけダウンスウィングでヘッドが遅れている感覚も感じましたね。あとやはり48インチともなると、一般的な長さのシャフトから約3インチ程度伸びるわけですから、しなりのポイントや量も当然変わってくるので、慣れが必要そうです。コツとしては、スウィング軸を意識して軸ブレせずに振るような感じでしょうか」(中村)
中村は長身なこともあり、スウィングリズムもゆっくりで、切り返しにも間があるタイプ。そのため、長尺化の恩恵を受けることができたようだ。このように、スウィングタイプによってかなりの「合う・合わない」があることがわかった。
合う人には飛距離アップ効果が期待できそう。ただ、カスタムシャフトもお値段が張るもの。お試し感覚で長尺シャフトを購入して後悔はしたくないところだが、「オススメの方法がありますよ」と堀口。
「新たなシャフトを買う際に、とりあえず長尺シャフトを用意してしまうんです。短いモデルを後から長くすることはできませんが、長いぶんにはカットすれば良いですから。まずは長尺のままバランスを整えて使い、良ければそのまま使用。合わないなと思ったら長さを整えると良いでしょう。新たに長尺シャフトを用意して、結局使わずに放置するよりは断然お得ですよ」
もちろんシャフトカット代はかかってしまうが、0.5インチや0.25インチ刻みで細かく調整していけば、どのくらいの長さまでなら自分が扱えるのかもわかるはず。長尺ドライバーを試したい! という方は、まずはこの方法を試してみてはいかがだろうか。ただ、ウェート調整機能で軽くできるヘッドか元々軽いヘッドを用意できないとバランスはかなり重くなる。自分の手持ちのドライバーで長尺化は可能かどうかも含め、信頼できるショップや工房に相談しながら進めるのがベターだ。