ゴルフにとってリズムやテンポは大切な要素です。練習通りのリズムでコースでもスウィングできるのがベストですし、実際ショットやパターの前に行うルーティンを自分らしいリズムで行えているときのほうが良いプレーにつながりやすい傾向にあるはずです。
私がメンタルコーチとしてサポートしているプロゴルファーたちも、その選手にとって良いゴルフができていないときは決まって「リズム(テンポ)が速かった」「焦るとどうしてもリズムが速くなる」と言います。この記事を読んでいるあなたはいかがでしょうか? 自身のゴルフのパフォーマンスとリズムに関連性はありそうですか?
ここではそのリズムがどのようにメンタルに影響するのか? またどうすれば自分らしいリズムを維持することができるのかについて考えていきたいと思います。
メンタルがリズムに与える影響は大きい
あなたの周りにいるゴルファーの中で、堂々としていてメンタルがぶれないなと感じる人をひとり思い浮かべてみてください。そのイメージした人物は、日頃から動作や話し方がゆっくりではありませんか?
これは仮説になりますが職業柄、人の心理と言動を観察する癖がある私からすると、鈍感な人や自信のある人ほど、動きやリズムはゆっくりになる傾向があります。そしてそれは、メンタルにも確実に影響を与えています。
例えば、代表的なものが呼吸です。緊張したり、ストレス状態にさらされると呼吸が浅く(速く)なりますよね。ホラー映画を見ているとき、恐怖や緊張で1秒吸って1秒吐くなどと呼吸はかなり浅くなっていることでしょう。呼吸が浅くなると、交感神経が優位になり、血流は速くなって筋肉も硬くなります。
また、逆にリラックス状態では呼吸が深くなります。お風呂で湯船に使っているときは「ふ~」っと深い呼吸になり、3秒吸って3~5秒吐くといったような、深い呼吸に自然となっているものです。呼吸が深くなると、副交感神経が優位になり、血流がおだやかになり筋肉も緩まります。
冒頭で「リズムがどのようにメンタルに影響するのか?」と問いかけましたが、実際のところは上で挙げた通り「メンタルがリズムにも影響している」と言った方が正しいのです。
先ほど例に挙げた「ホラー映画」をゴルフに置き換えてみましょう。出だしのティショットは誰もが緊張するものですよね。その緊張が呼吸を浅くし、さらに筋肉を硬直させ、動作を早くしている。結果スイングのリズムやルーティンのリズムが速くなってしまうということが起きているのです。
リズムをコントロールする
ではどうやって自分らしいリズムが作れるようにメンタルコントロールしていくのか。すごく簡単です。意識的に呼吸や動きをゆっくりと遂行し、それを継続するだけです。
その中でもっとも大事なことが呼吸をコントロールすることです。緊張などが原因でルーティンが速くなっているときは、まずプレーの合間に深い呼吸を意識的に行っていきましょう。深い呼吸をすることでリラクゼーションのスイッチである副交感神経が優位になります。副交感神経が優位になれば血の流れは緩やかになり筋肉もリラックスします。また呼吸だけではなく動作を意識的にゆっくり行うことも効果的です。
動作をゆっくり行うイメージで言うなら、ラグビーの五郎丸歩選手がフリーキックを蹴る前に行っているルーティンが参考になります(ぜひYouTubeなどでご覧ください)。ボールをセットし、軌道をイメージし、体に刺激を入れ、深い呼吸をし、ステップする。すべての動作が丁寧で緩やかです。見ているこちらまで心が整うような感覚になるかもしれません。
五郎丸選手はキックという動作そのものではなく、ひとつひとつの決めたルーティンを丁寧に、決められたリズムで遂行することに集中しているからこそ、試合でも練習時に近い安定した感情・動作でキックできているのです。
これはゴルフでも同じこと。出だしのティショットやフェアウェイが狭いなどロケーションの難しいホールでのショット、パットに緊張したり、また想定外の痛いミスが起きるなどしてイライラすることは誰にでもあります。そのような状況ではメンタルに影響を受けてリズムも速くなり、不安定になりがちです。そんなときこそ、意識的にルーティンやスウィングをゆっくりと丁寧に行うことで、普段通りの健全なメンタルの維持につながるんです。
今回の内容を、ぜひあなたのゴルフにも活かしてもらえれば幸いです。