2017年以来約3年半優勝から遠ざかっていたジョーダン・スピースが、PGAツアー「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」で3日目終了時点で首位、最終4位タイと復調の兆しを見せた。久しぶりの優勝争い、そして自身のプレーについてスピースは何を思う? 海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

「今は100%の“自信”はないが、いい方向に向かっていると思うし、それが大きな自信につながる」(スピース)

2017年「全英オープン」優勝以来、約3年半、ツアー未勝利に終わっているジョーダン・スピースだが、先週の「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」では3日目を終えて首位に立ち、久しぶりに優勝争いに加わった。

あいにく最終日はオーバーパーを叩き、優勝したブルックス・ケプカとは2打差で4位タイに沈んだが、長期に渡ってスランプに陥っているスピースの復活優勝に、ゴルフファンたちも大いに期待したことだろう。今大会の成績で、世界ランクは92位に、フェデックスカップは111位まで上昇している。

「今日はスウィング的にはここ数日と同様、最高にいい状態ではないが、改善していた。勝負ができるくらい、バーディチャンスを作ることができるくらいだった。でもパッティングで思うようにしっかり打てなかった。僕にはちょっとグリーンスピードが速すぎるように見えたんだ。オーバーパーを叩くのは嫌だ。最初は緊張したけど、その後はすぐに落ち着いてプレーできたし、いい兆候だね。最近、この位置(最終組)でプレーしてなかったから、すごく新鮮だよ」

画像: フェニックスオープンで4位タイフィニッシュと復調の兆しを見せたジョーダン・スピース(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

フェニックスオープンで4位タイフィニッシュと復調の兆しを見せたジョーダン・スピース(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

スピースは今季、8試合に出場し、予選落ちは4回。試合に出てもその半分は週末までプレーできずに自宅に戻り、予選を通過しても40位前後という彼にしてはふるわない成績だった。

さらにいうと、2015年フェデックスカップ(以下FC)1位(年間5勝)、2016年FC9位(年間2勝)、2017年FC2位(年間3勝)というように毎年優勝し、FCランクでトップ10を外したことのなかった彼が、2018年以降は優勝から遠ざかり、2018年FC31位、2019年FC44位、2020年FC107位と年々スランプの度合いが深刻になっていた。

今年も今大会の優勝がなければ、先週までのFCは179位。20代前半で「マスターズ」や「全米オープン」「全英オープン」でメジャー3勝を挙げ、フェデックスカップ総合優勝を飾った神童が、ここまで大スランプに陥っていたことに驚くゴルフファンもいるかもしれない。

ここ数年、彼はショットの正確性に欠き、それの影響を受けてか、得意のパッティングも入らなくなった。ドライバーを打ってもフェアウェイキープできず、グリーンを狙うアイアンショットもグリーンオンの確率が落ちて、自信も失っていた。だが彼は、長年スウィングを見てもらっているキャメロン・マコーミックと袂を分かつことはせず、彼と二人三脚でコツコツと自分が正しいと思うことをやり続けてきた。

そして今大会の3日目、キャリアベストである61(10アンダー)をマークし、久しぶりに首位に。かつて何度も優勝争いをしてきた彼だが、ここ最近は経験のなかった最終日・最終組でプレーするにあたり、かなり緊張していたようだ。

「今日(3日目)はスコアボードを見なかったけど、明日(最終日)も見ないと思う。ただ自分のやっていることを信じるだけ。いいショットができることはわかっているし、それが自信につながる。全部が完璧とは言わないけど、それが今の現状なんだ」

「今のスウィングをランクづければBマイナスと言ったところ。今はテンポについて取り組んでいるが、明日プレーするに当たって大事なことは、ゆっくり歩くこと、我慢すること、深呼吸、自分のやっていることを信じることだ。1日の目標や目標スコアを設定して、あとはやるべきことをやる。何も特別なことをする必要はない。まぁ、すごく緊張しそうだけどね。でも何度も僕は優勝争いを経験してきたし、ただそれが久しぶりなだけだ」

今回は61という好スコアをマークし、少しずつ自信を取り戻しつつあるスピース。まだラウンド中にスコアボードを見ながら、他人の状況を把握したり、作戦を考えるほどの余裕はないのかもしれない。

大きなスウィング改造をする必要もなく、優勝を目標に過度な期待を膨らませることも不要だと語っている。今はただ、自分のやっていることを信じ、すぐに結果を求めるのではなく、我慢強くやり続けることが大事。それは彼にとって新しい経験なのだという。

「今は100%の“自信”はないが、いい方向に向かっていると思うし、それが大きな自信につながる。ゴルフというゲームが好きだし、何にも縛られずに思い通りにプレーしたい。優勝したいし、元に戻りたいと思う」

ジョーダンが自信を持って最高のプレーができるようになるには、もう少し時間がかかるのかもしれない。だが、彼には過去にたくさんの成功体験があり、ショットとパットが噛み合えば、今回の61のようなビッグスコアを叩き出すこともできる。

2カ月後には「マスターズ」が開幕するが、オーガスタという場所は毎年何かしら劇的なドラマが生まれる特別な場所。パストチャンピオンの復活劇は、彼自信が栄光も挫折も経験しているオーガスタで見せてくれるのかもしれない。 

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