PGAツアー「AT&Tペブルビーチプロアマ」を制したダニエル・バーガー。2017年以来手首のケガにより優勝から遠ざかっていたバーガーだが、今シーズンではすでに2勝。その要因は新たなコーチによるところも大きいのだという。海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

昨年の6月、コロナウイルスによるツアー中断後初の大会「チャールズ・シュワブ・チャレンジ」で優勝したダニエル・バーガーが、観客もアマチュアプレーヤーも不在の「AT&Tペブルビーチプロアマ」で逆転優勝。ツアー4勝目を挙げた。この優勝により、フェデックスカップランキング10位に、世界ランキング13位に浮上している。

「(最終日の)18番ホールは、今までの人生でベストフィニッシングホールの一つだ。土曜日はティショットがOBになってしまったけど、今日はいいドライバーショットが打て、(2打目の)3番ウッドは人生で最高のショットだった。その上、パットが決まってくれて、さらに嬉しいご褒美が来たよ」

バーガーは3日目の18番ホールを首位タイで迎えていたが、ティショットでOBを叩き、首位のジョーダン・スピースと2打差の2位タイに順位を下げ、その日のラウンドを終えた。昨年10月の「CJカップ」以来、連続でパー、あるいはそれよりもいいスコアをマークしていた彼は、最終日も持ち前の攻撃的かつ安定感あるプレーでコツコツとイーグル、バーディを積み重ね、18番ホールを再び首位タイで迎えていた。

前日の悪い記憶が蘇ることはなかったのだろうか? 彼は最終日の18番ホールを振り返り、次のように答えた。

「僕のようにスライス系の球筋の人間には、18番のティショットは簡単だったんだ。(左の)海の方から右に曲がる球が打てるから(海には入らない)。できるだけ積極的にプレーしたかった。守りに入るようなスイングはしたくなかったんだ」

そして、「人生で最高だった」という会心の3番ウッドでの2打目では、冷たいアゲンストの風が吹く中、フルスウィングでカップまで250ヤードの距離を攻めた。風は右から吹いており、スライスを少しだけかければ、風向きと相殺されて真っすぐ打てるという状況。もともと3番ウッドが苦手な彼にとって、中途半端な距離のコントロールは不要で、フルショットすればいい、という状況も救いになった。思い切りアグレッシブにスウィングした結果、ピンから10メートルの位置にナイスオン。イーグルパットも決まり、後続組のプレーの終了を待たずして優勝が決まったのだった。

画像: バーガー自身が「人生で最高だった」と評する、最終日18番のセカンドショット(写真/Getty Images)

バーガー自身が「人生で最高だった」と評する、最終日18番のセカンドショット(写真/Getty Images)

以前は手首のケガに悩まされ、「2度と痛みを感じることなく、思い通りのプレーなどできないだろう」と思っていた彼だが、幸い良医に恵まれ100%回復できた。今ではもう痛みを感じることもなく、痛みに悩まされることはなくなったという。

そして技術面においても改善され、それがコロナ以降の2勝につながっているという。ジョーダン・スピースのコーチ、ジョーダン・スピースのコーチ、キャメロン・マコーミックにここ数年指導を受けており、昨年のツアー3勝目あたりから、徐々に結果が出始めた。

「彼の助けなくしては優勝できていなかったと思う。彼はショートゲーム、パッティング、その他ゴルフ全般で自分とは違う見方を教えてくれたんだ。彼はただ僕に自信をつけてくれ、何も変えることなく自分自身でいれば良い、ということを教えてくれた。そしてどうやって練習に取り組めばいいのか、どうすればもっとゴルフがよくなるのかを教えてくれたんだ。これらのことは、ここ1〜2年、見失っていたことだった」

大きなスイング改造ではないが、ショートゲームのバリエーションを増やすようにアドバイスされたという。彼はいつも同じようなショット、弾道、スピン量で単調なアプローチをしていたが、ミケルソンやスピースのようなグリーン周りの達人たちは、もっといろいろな球筋を打ち分けて寄せていることを説明。これが彼のゲームに奥行きを与え、様々な状況にも対応できるようになったという。

もともと攻撃的なプレーヤーだが、そんな彼も毎ホール、心臓がドキドキするという。プレッシャーがかかるのが大好きで、不安なものとしてではなく、楽しくてワクワクするものとして捉えている。攻撃的で恐れを知らない性格に、我慢強く静かに対峙する力も持ち合わせているのが、彼の大きな武器。体調面の不安もなくなり、あとはマコーミックコーチの指導で技術面をさらにブラッシュアップすれば、彼の目指す「世界ランク1位」も夢ではない。

先週「WMフェニックスオープン」で復活優勝を遂げた元世界ランク1位のブルックス・ケプカとはジュニア時代からの付き合いだが、彼の優勝を見て刺激を受けたという。過去、「6月2週目」の大会で3勝という“珍記録”を持っているが、今回は「2月2週目」に優勝した。「2週目」に強い彼が、今、最も欲しいタイトルは「4月2週目」に開催される「マスターズ」であろう。

歴史的な大会で優勝するのは最高だ、と語るバーガー。 今までのところ、26ラウンド連続でオーバーパーを叩かない記録を保持しているが(現在ツアー1位)、今回の優勝でさらに自信をつけ、今の調子でいけば、歴史的な場所「マスターズ」でメジャー初優勝を果たし、ライバルのケプカが掴んだ世界1位の座を、今度は彼が獲りにいく可能性も十分高い。

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