ゴルフは飛距離の勝負ではない。直径4.25センチのカップにいかに少ない打数で入れるかの勝負である。稲森は国内でも飛ばない選手のひとりだが絶対曲がらないゴルフで日本オープン2勝を挙げ、20-21年シーズンは賞金ランクトップに立っている。
「海外留学のつもりで行ってきます」と日本を発ち初のアメリカ本土での大会に挑んだ彼。2日目にはノーボギーの68をマークし手応えを口にしたが最終日大きな壁にぶち当たった。よりによって米ツアーのドライビングディスタンスナンバー1、ブライソン・デシャンボーと同組で回ることになったのだ。
結果はデシャンボーがイーグルを2つ奪って3アンダー69で順位を6つ上げ22位タイでフィニッシュしたのに対し稲森はダブルボギーを2つ叩き6オーバー78で20ランクダウンの48位タイ。「完全なる圧倒的飛距離ですね。自分のゴルフが全然できなかった。(雰囲気に?)のみこまれました」と自失呆然の体(てい)。
稲森の4日間の平均ドライビングディスタンスは出場選手71名中71番目。ティショットは余裕でデシャンボーに100ヤード置いていかれた。
「彼が握っているセカンドの番手がパー4ではほぼほぼサンドウェッジ。パー5の2打目もピッチングウェッジとか9番アイアン。かたや自分は3番ウッドですから感覚がおかしくなりそうでした」と振り返る。
そもそも朝から調子が悪く雰囲気にのまれる以前に戦うための武器も失っていた。「昨日まで耐えてきたものを今日すべて放出してしまった。ドライバーからパターまで全ホールミスしてしまった。
今日のことは忘れたいです」。
一方デシャンボーは「悪くはなかったけれどツキがなかった」と昨年2位のリベンジを誓った大会で上位争いができず落胆の表情。
稲森いわく「異色の組み合わせ」となったこの日はデシャンボーに軍配が上がったが、難コースと厚いフィールドに阻まれながらノーボギーの68をマークした2日目のようなプレーもできることも確かな事実。
「ここで得た課題を(日本に)持って帰って見直し練習するしかない」
決意も新たに稲森は新たなステップを歩みはじめるだろう。