昨年秋、ドライバーと同時発売されたスリクソンZXシリーズのアイアン「ZX5」と「ZX7」。アスリート向けブランドということもありプロの使用者も多く、ZX5は3月から開幕となった国内女子ツアーでも安田祐香や淺井咲希らが使用。ZX7は契約フリーのブルックス・ケプカが2021年からバッグインし勝利を挙げるなどそれぞれ注目度の高いモデルとなっている。
また、この2モデルに加え3月20日には新たな兄弟モデル「ZX4」の発売が予定され、計3モデルのラインナップとなるZXアイアンシリーズだが、はたしてそれぞれどのような性格付けがなされているのか。プロゴルファー・中村修と堀口宜篤に試打して確かめてもらおう。
試打スペックは3モデルとも7番で、シャフトは純正シャフトのSフレックス。ボールはタイトリスト「プロV1」を使用して行った。
シャープだけどやさしい「ZX7」
まずはケプカも採用したZX7から見ていこう。キャビティバック形状で、3モデルの中ではもっともシャープかつ操作性が高く、ロフトも7番で32度ともっとも寝ているアスリート向けと言えるモデルだ。
中村も構えた見た目にはアスリート向けらしいシャープさを感じると言うが、その一方で「やさしさもある」と話す。
「重心距離もちょっと長く感じるくらい面長で、ネック部がキュッと締まっている感じ。海外で好まれる見た目ですね。構えたときにフェースがビシッとターゲット方向に向くような感じで、すごく構えやすいです」(中村)
堀口も「シャープながら、トップブレードもマッスルバックほど薄くなくそんなに難しい印象はありません」という。ではさっそく試打結果を見ていこう。
【中村のZX7アイアン試打結果】
キャリー167.7ヤード トータル176.3ヤード 打ち出し角19.5度 スピン量5028.7rpm
【堀口のZX7アイアン試打結果】
キャリー165.7ヤード トータル174.7ヤード 打ち出し角18.1度 スピン量4982rpm
両者が驚いたのは高さの出しやすさ。打ち出し角が高く、かつスピン量もしっかりかかっており、アイアンに必要な要素が確保されていると口を揃える。
「思ったより球が上がるのに驚きました。打感も柔らかい。形状はシャープですが、インパクト時にボールを包んでくれるような感触があって、打っててめちゃくちゃ気持ち良いです」(堀口)
「思ったより球が上がりますが、高さを抑えようとすればしっかり反応して中弾道になります。弾道も自由自在に操れそうな感じがありますね。操作性もありつつやさしさも感じる、実戦的なアイアンと言えるでしょう」(中村)
アスリートモデルとはいえ、キャビティバック形状ということもあり「一般的なマッスルバック形状のモデルと比べれば、確実にやさしいですね」と堀口。中村は「ZX7はキャビティバック形状ですが、削ったぶんの余剰重量をフェース周辺部にすべて配分して寛容性を最大まで高めるのではなく、あえて打点付近にある程度残しているんですよね。それがマッスルの良さも残しつつやさしさも感じる仕上がりになっている理由ではないでしょうか」と分析した。
やさしすぎず難しすぎない「ZX5」
続いてはZX5。こちらはポケットキャビティ構造を採用。ロフトは7番で31度。4~7番に関してはヘッド内部にタングステンウェートが搭載されており、ZX7と比べて寛容性を高めたモデルと言えるだろう。
ヘッド形状については基本的にはZX7を踏襲しているが「ソール幅が若干広くなっているのもあって、少し優しい感じがしますね」と堀口。さっそく両者の試打結果を見てみよう。
【中村のZX5アイアン試打結果】
キャリー175ヤード トータル183.7ヤード 打ち出し角18.4度 スピン量5090rpm
【堀口のZX5アイアン試打結果】
キャリー175.5ヤード トータル186ヤード 打ち出し角17.9度 スピン量4893rpm
ZX7とのロフトの差は1度だが、トータル飛距離はZX5に軍配が上がる。打ち出し角もZX7同様高く、スピン量も5000rpm前後で十分確保されている結果に。
トータル飛距離にも表れているが「ZX5は“やや飛び系”という感じで、寛容性と飛距離性能が高まっていますね」と堀口。
「ロフトは1度しか変わりませんし見た目も同様な感じですが、性能は全然違いますね。打感は吸い付いている感触もありますが、やはりZX7と比べると弾く感触が強まった印象ですね。でもスピンはしっかり入っています」(堀口)
中村も「スイートエリアがZX7よりも広くて、フェース下目のヒットにも強そうです。タングステンウェートのぶん低重心になっているので安心して打てますね」と寛容性の高さを実感。
両者はZX5を「寛容性はあるけど、ロフトも31度だから飛び過ぎない。やさしすぎず難しすぎず、その中間をうまくとらえたモデル」と評した。
アスリートモデルの見た目を備えた飛び系「ZX4」
最後は新たに追加された兄弟モデルZX4は中空構造を採用し、トウ側に高比重のタングステンウェートを搭載することで深・低重心設計に。3モデル中もっとも寛容性が高く、ロフトは7番で28.5度とまさしく飛び系アイアンと言える設定だ。
形状的にはZX5よりさらにソール幅が広くなっており、「トップブレードもスリクソンの中で言えば厚い部類。アスリート向けのイメージがスリクソンにはあるけど、これは使えそうと思える感じがありますね」と堀口。試打結果は以下のようになった。
【中村のZX4アイアン試打結果】
キャリー182.6ヤード トータルヤード199.7 打ち出し角16.5度 スピン量3452rpm
【堀口のZX4アイアン試打結果】
キャリー175ヤード トータル190ヤード 打ち出し角16.1度 スピン量4029.7rpm
ZX7よりやや飛距離が伸びたZX5と比べてさらに飛距離アップ。打ち出し角についてはロフトが立っているぶんやや控えめだが、それでも十分に高弾道。一方、スピン量は比較的低めに出る傾向となった。
「飛び系らしい、オートマチックな感じ。自分で何かするというよりは、クラブが勝手に弾いて飛ばしてくれるイメージです。スピン量は若干落ちていますが、高さは出てくれていますね」(堀口)
アスリート向けブランドのスリクソンに、同じくダンロップのゼクシオのような、アマチュア層をターゲットにした飛び系のラインナップ。一見ミスマッチのように見えるが「あくまで見た目はスリクソンの流れ、というところがポイントですね」と中村は言う。
「ZX4はソール幅など若干の違いはありますが、他2モデルを踏襲した顔つきをしていて、フェースの見え方も似ています。これはやさしさに特化したゼクシオシリーズと違う点ですね。とくに昔からゴルフをやっていて、今までシャープな見た目のアイアンに慣れ親しんできたけど最近は飛距離が落ちてきてしまった、なんて方にはスリクソンシリーズの顔の良さもあって違和感なく合うのではないでしょうか」(中村)
3モデルをまとめると、マッスルバックのような打感の良さと操作性がありつつやさしさも感じられるZX7。やさしすぎず難しすぎない「スリクソンアイアンを使ってみたいけど、プロモデルで難しすぎるのはちょっと……」という層にピッタリのZX5。アスリートモデルらしい見た目を備えた飛び系アイアンのZX4、といったところだろうか。
それぞれしっかり対象ゴルファーが分かれた感のあるスリクソンZXアイアン3モデル。アスリートモデルだから、と気負わずに試打してみてはいかがだろうか。
※2021年3月17日18時55分 文章を一部修正いたしました