松山英樹が日本人初の「マスターズ」優勝という快挙を達成。日本全国のゴルフファンたちが、早朝から、あるいは徹夜で彼の偉業を見守った。
さて、18番グリーンで最後のパットを決め、優勝が決まったら、その後チャンピオンは何をするのか? テレビでは事細かに紹介はされないが、マスターズチャンピオンが通るべきルートや、決められたルーティーンがある。松山英樹が辿ったであろうルートを簡単にご紹介しておこう。
18番グリーン奥で控えている家族や仲間たちとハグで優勝を祝福すると、その後はスコアリングエリアに進み、スコアカードを提出する。そしてその後は「バトラーキャビン」と呼ばれる小屋に誘導される。TVを観ていた人はおわかりだと思うが、オーガスタ・ナショナルのフレッド・リドリー委員長、前年チャンピオンのダスティン・ジョンソンとともにリビングのようなところで、コメンテーターのジム・ナンツ氏から松山英樹がインタビューを受けていた場所である。
実際、このスペースは大会中、テレビ局の基地として使われているが、ここでは前年度優勝者から、1回目のグリーンジャケットを受け取るセレモニーが行われる。グリーンジャケットは、とりあえず仮のものが用意され、ざっと6着ほどの中から、自分に最も合うサイズのものを貸してくれるそうである。
そしてその後は外に出て、クラブハウス前のパッティンググリーンに進む。ここでは委員長や優勝者のスピーチが行われるとともに、2回目のグリーンジャケットの贈呈式が行われる。カメラマンたちにとっては、大事なシャッターチャンス。今年はコロナ時代ということで、カメラマンの人数も制限されていた。
また、今年は各ツアー団体の代表者は出席していなかったが、通常は一通りのツアーの上層部の人たちが集合し、表彰式に出席する。一通り終わったら、今度は選手がクラブハウスを象ったトロフィを掲げて、ニッコリ記念撮影だ。
その後はカートに乗せられ、プレスビルに向かい、公式記者会見に臨む。以前は1番ホールの右隣にプレスビルがあったが、現在は練習場の奥にあり、カートで5分ちょっとかかる距離だ。会見場に入ると、記者たちから拍手で迎えられ、グリーンジャケットを着用しているメンバーが司会役で会見が進行する。これは他のメジャーでは見られない伝統。通常、「全米オープン」や「全米プロ」「全英オープン」では、各ツアー団体のメディア担当者が司会役をこなすからだ。
一通り取材が終わると、もう一度「バトラーキャビン」に戻る。そこには家族や仲間たちが待っており、改めてそこで優勝を祝いあう。そしてグリーンジャケットを着用しているメンバーたちとともに食事。選手によっては食事中に大統領からお祝いの電話がかかってきたりすることもあるという。松山英樹の場合も首相から電話があったどうかは不明だが……。
そしてその後、コースを後にして、翌日にはニューヨークで朝の生番組に出演。エンパイヤーステートビルに登って記念撮影などが待っている。マスターズで優勝することは、それだけ全世界の人々から注目され、祝福される特別なことなのだ。
なお、松山英樹が手にした、マスターズチャンピオンの特典は以下の通り。
1.グリーンジャケット:優勝して1年間は、持ち出して着用できる。2年目以降はクラブに返却し、オーガスタにいる時だけ着用できる。以前、ゲーリー・プレーヤーが南アフリカの自宅にグリーンジャケットを持ち帰り、1年経っても返却しなかったため、お咎めを受けたというエピソードがある。なお、マスターズで複数回優勝しても、もらえるのは1着のみで、よほど体型が変わってしまった時だけサイズの合ったものに作り替えることができるそうだ。
2.マスターズトロフィ:マスターズのトロフィは、クラブハウスを象ったもので、オリジナルはかなり大きなものである(クラブハウス内に展示されている)。選手たちが実際に受け取るのはこれのレプリカで小型なもの。松山が表彰式で掲げていたものはレプリカである。なお、このトロフィは複数個の購入もできるそうだ。
3.生涯のマスターズ出場権:マスターズチャンピオンは、基本的に一生マスターズに出場できる。ちなみに「全米オープン」は10年間の出場権、「全米プロ」は「マスターズ」同様、基本的に生涯出場可能。「全英オープン」は60歳までの出場権を得ることができる。
4.「全米オープン」「全米プロ」「全英オープン」の5年間の出場権。
5.「プレーヤーズ選手権」の5年間の出場権。
6. 5年間のPGAツアーシード権。
7.来年の「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」(ハワイ・カパルアプランテーションで開催)への出場権。
8.公式世界ゴルフランキングの100ポイント。
9. 600フェデックスカップ・ポイント
10.もし米国選手、あるいは欧州選手であれば「ライダーカップ」ポイントを獲得できるが、松山の場合は該当せず。