パットのルーティンが短くなっていた
海外メジャー「マスターズ」を制した松山英樹。日本では多くのゴルフファンが早朝から最終日のプレー中継に注目していたことだろうが、小澤美奈瀬もそのうちの一人だ。
小澤は1992年2月生まれで松山とは同年同月生まれ。松山のプレーにはもちろん注目しており、2019年の「ソニーオープンinハワイ」は現地で観戦したというほど。
そんな小澤が「以前までのプレーとマスターズでは、印象が変わった部分があります」という。まず一つ目は「パットのルーティン」だ。
「以前までの松山選手はしっかり構えて素振りをして、自分の中でリズムを作ってから打っていくルーティンでした。それがマスターズではルーティンにかける時間がかなり短縮されて、イメージを出して構えたらすぐ打っているのが印象的でした」(小澤、以下同)
とくにパットでは「イメージ力に優れる右脳を働かせて打っていきたい」と小澤は言うが、ルーティンに時間をかけてしまうと、打つ前にいろんなことを考えて過ぎてしまうと左脳優位になり、最初のイメージがなくなってしまう、なんてことも起きてしまうという。
「たとえばラインを読んでカップ2つぶん曲がるフックラインを想定していたのに、構えたあとのルーティンに時間をかけてしまうと、再びカップを見たときに『もうちょっと切れるかな』などと考えてしまって、構えの向きを直したりといった、最初のイメージと離れたパッティングをしてしまうことがあります。松山選手はルーティンが短くなったことでより右脳優位でプレーでき、イメージが出しやすくなったのではないでしょうか」
この松山がマスターズで見せた短いパットルーティンは「ぜひアマチュアの方にも試していただきたいです」と小澤。
「もちろんライン読みには時間をかけても良いです。しっかりしゃがんで、2~3方向から見てあげると、ラインの取りこぼしがなくなってきますよ。ですが、『この強さでこのラインに向けて打っていく』と決まった時点で、構えたらすぐに打つほうがいろんな邪念がなくなっていくのでオススメです」
パターではラインとタッチが大事になってくるんですけど、このタッチの感覚のイメージもうまくつくれなくなってしまう
あとは転がるスピード感、自分のストロークのスピード感にフォーカスして上げると、すぐにうつことができる。そのほうがイメージがしっかり出たまま打てる
ミスショットの場面でも笑顔を見せていた
もう一つ、小澤が観戦していて印象的だったというのは松山の「笑顔」だ。
「今まで私が松山選手のプレーを見てきた中で、本当に完璧なショットを追求するプレーヤーなのかなという印象を持っていたんですけど、マスターズでは、たとえば最終日16番でセカンドを奥の池に入れてしまった場面。内心では怒りを露わにしたいようなミスの場面でも、松山選手は全然怒った様子を見せませんでした。他のミスショットの場面でも笑顔でやり過ごされていましたね。逆にロングパットが決まったときは素直に喜んでいらっしゃる姿を見て、なんて言うんだろう、“悟りの世界”に入ったのかな、みたいな印象を抱きました(笑)」
もちろんミスショットに対して落ち込んだり、怒ることも「それを原動力に変えていけるので大事な感情です」と小澤。ただ、悪い方向にも行きやすくなってしまう心の動きでもあるのは間違いない。そんなときに大切なのが笑顔なのだという。
この笑顔によるメンタルコントロールは「プレーにも良い影響を与えますよ」と小澤。
「たとえば今よりもミスショットの許容範囲を少し広げてあげて、笑顔で受け流してみましょう。すると心の余裕が生まれて、プレーも上向きになっていくと思います。たとえ作り笑顔だったとしても、脳が“今楽しい状態なんだ”と認識してくれるので良い影響はありますよ」
笑顔の面で言うと、国内女子ツアーで今シーズンすでに3勝を挙げている小祝さくらも「笑顔が印象的」と小澤。「常にニコっとしていて、それこそ最終日最終組で優勝争いをしているときや、プレーオフをしているときでも変わりません。個人的に女子ゴルファーの中では小祝選手がダントツナンバーワンで笑顔やメンタル的な部分で尊敬しています」という。
松山のパワフルなスウィングをアマチュアがマネをするのは至難の業だが、パッティングのルーティンの短さや、プレー中に笑顔を心がけるといった部分は誰しもがすぐ実践できること。ゴルフをより上手く楽しくプレーするために、参考にしてみてはいかがだろう。