筋力よりも柔軟性が大事
高島:今回はユージさんのさらなる飛距離アップのために、和田さんが普段行っているトレーニングをユージさんにもやってもらおうということなんですよ。
ユージ:ぜひやりましょう!
和田:みなさん飛ばすには筋トレが必要だといいますが、僕は柔軟性のほうが大事だと思っているんですよ。なぜかと言うと、柔軟性を高めたうえに筋トレをすると、可動域の広い体にパワーが加算されるので、飛距離がMAXになるということなんです。逆に、柔軟性を高めずに筋トレをすると、大きいだけで硬い筋肉になってしまうので、それはスウィングの邪魔になるだけです。そこで今日は、まず体の可動域を広げるためのメニューをメインにやっていきたいと思います。
ユージ:よろしくお願いいたします!
肩周りの筋肉や関節のストレッチ
和田:まずドライバーの両端を持ち、腕を真っすぐに伸ばしたまま、クラブを体の前から体の後ろに回し、さらに後ろから前に戻します。この時に、ひじを曲げないとクラブが後ろに回らない場合は、肩周りの可動域が狭くなっている証拠。こういう人はトップで肩をしっかりと入れることができなかったり、フィニッシュでクラブが背中に当たるバウンディングできずに振り切れないスウィングになってしまいます。
ユージ:う~ん、キツイ!
和田:ユージさん、ひじが曲がってしまっているのと、両手の小指がクラブから離れてしまっていますね。すると楽に体を回せてしまうので、指は離しちゃダメですよ。これがスムーズにできないと良いスウィングはできません。一日5往復はやってください。
腕のストレッチ
和田:次は腕のストレッチ。先ほど同じようにドライバーの両端を持ち、そのまま腕を上げていき頭の少し後ろ辺りのもっとも腕にストレッチが掛かる辺りでストップ。そして体を少し前傾させ、この腕を張った状態でシャドースウィング、下半身を動かして体を回転させます。これを10往復くらいやります。
――お手本を披露する和田は、下半身を動かしながらも上半身が微動だにしないくらい安定していたが、ユージの場合、腕に余分な力が入り姿勢がぐらついてしまう。
ユージ:あ~キツイ! キツイよ~!
高島:どこが伸びていますか?
ユージ:二の腕の裏側と、前腕の外側が伸びてます。ちょっと痛いですね。
和田:前者が上腕三頭筋、後者が腕橈骨筋(わんとうこつきん)ですね。その2か所が痛いのであれば、ストレッチが効いている証拠です。続けていれば効果が期待できるので、コレも10往復を日課にしてください。
わき腹(腹斜筋)のストレッチ=側屈
和田:次はわき腹のストレッチです。前2つのドリルと同じようにドライバーの両端を握り、頭の少し後ろ辺りの腕にもっともストレッチが掛かるところでキープ。そこから今度は体を真横に倒していき側屈をします。
ユージ:やってみます!――お、今までのストレッチで体がほぐれてきたのか、スムーズにいけますね。わき腹が伸びているのを感じます。これはどういう効果があるんですか?
和田:腹斜筋が伸びるとバックスウィングでトップが深く入るんです。そしてダウンスウィングでは縮みフォローでまた伸びるので、腹斜筋周辺のストレッチは飛距離アップのためには絶対にやって欲しいですね。これを毎日、左右それぞれ10~20秒やってください。
手首のストレッチ
和田:次は手首。クラブをしならせるためには手首が柔らかくないといけないので大事です。まず、右手は通常通りグリップをして、右腕をダランとさせてひじを右のわき腹に当てます。この状態でクラブヘッドをクルクルと後ろ回しで回転させます。手首が柔らかければヘッドは体の近くで回転するけれど、手首が硬い人はヘッドは体から離れたところで回転します。
これも回転させる時にグリップから小指を離してしまうと、簡単に回せてしまうのでNG。指を外さずに回し、後ろ回しで10回やったら、前回しでも10回。右腕側・左腕側それぞれ10回ずつやってみましょう。
ユージ:お、これは後ろ回しも前回しも、そこそこできますね。安定して体の近くで回せます。
高島:私は手首が痛い~!
和田:高島の場合は、手首が硬くてヘッドが波打つように不安定な軌道ですね。つまり、まだまだ飛距離の伸び代があるということです。
ユージ:そうなんですか?
和田:手首が硬くてヘッドが体から遠い所を回る人は、スウィングの時にヘッドが走っていないのと同じ状態で、これは飛距離が出ません。ヘッドを走らせるには手首の柔らかさが必要になるので、このドリルで手首の柔軟性を高めてください。
肩周りとわき腹のストレッチ
和田:次は肩周りとわき腹のストレッチ。まず、右腕を壁側にした状態で、壁面スレスレに立ちます。その場でトップの形を作り、左手の小指側の側面を壁にくっつけます。すると、壁面と体との間に隙間ができるので、この隙間を埋めるように左腕から左肩にかけてピタッと壁に押し当てていきます。これを20秒間行ってください。
この時、左ひじを曲げずに行うんですが、肩周りの筋肉が硬いとピタリと壁にくっつきません。左肩ができたら、逆に立って右肩も同様にやってみましょう。
ユージ:やってみると、結構気持ち良い。腹斜筋も凄く伸びてます。
和田:ポイントはトップでボールを見ているときをイメージして顔をできるだけ下に向けること。そして足を踏み込んで(壁側に体を)押し込んでいきましょう。
ユージ:今までのストレッチのおかげもあってか、これは割と楽です。
和田:良いですね。慣れてきたら、もっと高いトップを作ってみましょう。そのほうがもっとキツいですよ。
ユージ:あ、本当だ。キツい……。
上半身の筋トレ=腕立て(プッシュアップ)
和田:ストレッチで充分に柔軟性が確保できたら、次は、上半身の筋力もつけるトレーニング、腕立てですね。
高島:何か意識したほうが良いことってありますか?
和田:腕立て伏せ(プッシュアップ)をする時に、プッシュで体を沈める時に腕ではなく肩甲骨を背骨に寄せていき、アップの時には肩甲骨を広げる。このように肩甲骨を、寄せて、広げる、この要領でやってみてください。ちょっとお手本を見せますね。
ユージ:たしかに体を沈めるときに、メッチャ寄ってますね。
高島:本当だ、寄ってる、寄ってる。
和田:腕立ては腕の筋力ではなく、肩甲骨を寄せるように意識してやってみてください。そうすると筋トレだけじゃなく、肩甲骨周りの柔軟性のアップにも繋がりますよ。
腹筋に効く「人は平らになれるのか」トレーニング
和田:最後に、僕がいつもやっているトレーニングなんですけど。腹筋を鍛える「腹筋ローラー」ってあるじゃないですか。
ユージ:ローラー部分に持ち手が付いていて、コロコロ転がすやつですね。
和田:あれの応用編なんですけど、「人は平らになれるのか」というトレーニングをやります。腕立ての状態から徐々に両手だけを、右手、左手、右手を交互に少しづつ前に伸ばしていきます。そして最終的に「平ら」になるんです。
――和田師匠がお手本をやると、まるで地面に突っ伏しているような状態になった。
ユージ:本当に真っ平! ……でもあれ、体、浮いてますか?
高島:あ、浮いてる!
和田:それでこの状態から、また片手ずつもとの状態に戻っていきます。
ユージ:え~! ……やってみましたけどキツいですね。体が地面に付いちゃいます。
和田:ギリギリまで体を地面に近づけながら、浮かせた状態をキープできるくらいの体幹力が付くと、ダウンスウィングでの沈み込みが上手くできるようになるんですよ。とりあえず10秒間、平らな状態で我慢することを目標にしてみましょう。
ユージ:わかりました!
和田:今回は、上半身の柔軟性アップをメインで教えました。よくトップで上半身を伸ばしましょうとか、ねじりを作るために耐えましょうとか言いますけど、こういったストレッチで体のベースを作っておかないとその動きってできないんですよね。もちろん、股関節周りや下半身も大事なんですけど、アマチュアの人は特に上半身の肩や脇腹周りの筋肉が硬い人が多いので。
ユージ:教えていただいたストレッチと筋トレをやって、本番までに飛距離アップを図っていきたいと思います!
協力/LETSGOLF銀座 写真/野村知也