激しい雨でグリーンは水浸し。一部コースに新たな川が出現するほどの豪雨に見舞われた最終日。「とにかく我慢強いプレーを心掛けた」と終始安定したプレーを貫いた李がツアー参戦80試合目にして初の栄冠に輝いた。
身重の妻と韓国のパイオニア、チェ・キョンジュ(K.J.チョイ)の目の前で決めたウィニングパットはわずか20センチ。見事なバーディフィニッシュで決着をつけると「まだ信じられない」と童顔をほころばせた。
この勝利で次週行われるメジャー、全米プロゴルフ選手権への最後の切符も手に入れ「まだ実感がない」といいつつも、最終日を振り返り「長い1日でした。皆にとってもそうだったと思います。ポジティブシンキングを心がけ、自分のゴルフに集中するためリーダーボードも見ないようにしていました。勝てて本当にうれしい」とホッとした表情を浮かべた。
韓国ソウル出身の李が人生で初めてクラブを握ったのは13歳と他の選手に比べるとやや遅め。きっかけは「肥満児だったのでスポーツをやらせれば痩せるだろうと両親が思ったみたいです」。当初はダイエットのためのゴルフだったが、あっという間にのめり込みジュニア大会で活躍するようになった。
10代で競争の激しい韓国でトップクラスの選手になると2012年には予選会ランク1位の資格で日本男子ツアーにフル参戦。するとわずか9試合目のセガサミーカップで早くも優勝し、2015年のHONMA TOUR WORLD CUPで2勝目を挙げ2016年にアメリカの下部ツアー(コーンフェリーツアー)に挑戦。2019年にはレギュラーツアーに昇格した。松山英樹や石川遼と同じ91年生まれ。ライバルのマスターズ勝利が大きな刺激になったことは想像に難くない。
日本男子ツアーで活躍していた頃もいまと同じぽっちゃり体型。たまに「もてたいから」とダイエットした時期もあったが結局そのままの体型で可愛らいしい奥様を射止めている。
ところで今回米ツアー初優勝のナイスアシストをしたといわれる人物が帯同キャディのブレット・ワルドマンさん。ライアン・ムーアなど有名選手のバッグを担いできたベテランは、本人もプロ級の腕前でQT(ツアー出場権をかけた予選会)にも出場した経験を持つ。
2010年にはセカンドQTを14位タイで突破したのだが、そのときの舞台が今回と同じダラスのTPCグレイグランチ(コース)。伸ばし合いの展開のなか攻めるべきところ守るべきところを的確にアドバイスしたワルドマンキャディは李にとって心強いパートナー。勝つときはすべてが噛み合うものだが今週はすべてのベクトルが李の優勝を指していたようだ。