2日間の短縮競技となった中京テレビ・ブリヂストンレディスは、土曜日の初日に「61」の爆発的スコアを出した稲見萌寧が2位に6打差をつける圧勝で制した。今年に入って5勝目と圧倒的強さを見せている稲見だが、大会前、また大会後も「ショットの調子がすごく悪い」と語っていた!? 月刊ゴルフダイジェストツアー担当が現地レポート。
大会最終日。初日に11アンダーを出した稲見萌寧選手を脅かす選手は出てくるのか? はたまたこのまま独走で優勝を飾るのか? 見ている側としては、接戦になるほど緊張感や先がわからないワクワク感が増してくるので、どうしても後者を期待してしまうのですが……結果はご存知の通り、6打差圧勝。しかし、圧勝だったからといって、つまらない試合だったかというと、決してそうではありません。稲見選手の“凄み”を見た試合でした。
稲見選手は大会前も、初日も、そして優勝後も、次のようにコメントしています。
「ショットの調子がすごく悪い。ここまで不安になることはあまりないのですが……。どうしようかと思っていました」
優勝した人のコメントとは思えないですが、確かに稲見選手のコメントです。最終日、実際にプレーを見ていましたが、本人の言う通り、ティショットでいくつかミスが出ていたのは事実です。ですが、こちらから見ていると、そこまで調子が悪いという印象は受けませんでした。それは、「さすがショットメーカー」という場面がいくつもあったからです。8番、9番、17番では、バンカーにつかまったものの、そこから見事にグリーンオンさせていましたし、なんなくパーを拾っていました。
稲見選手は2019年パーオン率1位のショットメーカーであり、自他ともに認める“完璧主義者”です。理想が高いからこそ、こちらからではあまり調子が悪そうに見えなくても、本人としては納得できないのかもしれません。
稲見選手の“そこそこ”は普通の選手の“好調”くらいの感覚があるのだと思います。そこそこでもパーオンでき、パットが入ればスコアが出るし、入らない日は“そこそこ”の成績でまとめてくるというわけです。「ラインがしっかり読めました。そして、読んだラインに対して、しっかり打ち出すことができた。だからスコアが作れたのだと思います」と、本人も話すように、今大会、とくに土曜日55メートル前後のパットをことごとく入れていたので、あの爆発的なスコアが出たんですね。
彼女のゴルフは、大きな波がなく、淡々と18ホール進んでいきます。大きなミスをせず、無理な攻めをせず……でも気がついたら好スコアで回っている。それは、見方によっては、少し物足りなく、拍子抜けするような感覚にもなります。確かに、ビッグドライブや、林からのスーパーショットに我々は魅了されます。しかし、堅実でありながら、決めるところでしっかり決める。そういうプレーにもまた魅了されます。そして、勝ち続ける選手には、もっとも魅了される。それが稲見選手なのです。
今大会は「パットに救われた」と話していましたが、ショットとパットが絶好調になり、両方が噛み合ったとき、どんなゴルフを見せてくれるのか。さらなる可能性を感じさせてくれました。
写真/岡沢裕行