後から来る“他の人”のためにグリーンを「平らに」してから去る
アイアンやウェッジでボールが高く上がり、グリーンにドスンと落下した時にできるのがピッチマーク(ボールマークともいう)である。落下の衝撃によってグリーンに窪みができてしまうのだ。ゴルフではこの窪みをプレーヤー自身で直すのがエチケットとされている。自分のボールが止まっているエリアの手前に窪みがあったら、自分のボールが作ったものだと思って直しておこう!
で? というのがビギナーを取り巻くゴルフの現状だろうか。自分のショットの後始末は自分でやるのが当然でしょ! という雰囲気は醸し出すけれど、どのように直したらいいのか、については意外に教えてくれない。初心者だけで手軽にコースデビューもできてしまう今の時代ならば、ピッチマークはプレーヤーが直すものということさえも教えてもらえない可能性が高い。やらない、できないの前に“知らない”のだ。
では、グリーン上のピッチマークをどう直せばいいのか。改めて紹介してみたい。解説は太平洋クラブ八千代コースのグリーンキーパー、市村英昭さんだ。
市村キーパーはまず「後から来る他のプレーヤーのためにグリーン面を平らに保つお手伝いをしてほしい」という。ゴルフ場ではコース管理スタッフが気持ち良いパッティングのために精一杯メンテナンスしているが、キャディがついていない場合はプレーヤーが補修しない限り、ピッチマークは放置されることになる。
「コース管理の立場からいえば、ピッチマークを放置する時間が長ければ長いほど芝が枯れてしまうため、見つけた場合はすぐに直したい!と思います(笑)。とくに芝生がめくれ土が露出してしまっているような場合は、すぐに直して欲しいです。とにかく、後に続くプレーヤーのために“平らにしておいてあげよう”と思っていただけたらいいのかな、と思いますね」(市村キーパー)
ピッチマークは付けた直後に修復すれば、翌日に跡が残ることはない。しかし、数時間放置すれば環境(季節)によっては芝枯れが進み、一週間以上回復に時間がかかる場合があるのだ。今の「まぁいいか」が後続プレーヤーだけでなく、翌日以降のプレーヤーにまで影響が及ぶ可能性があるという想像力を持って、ラウンドしたいものである。
コース管理のプロが教えるグリーンフォークの意外な使い方
さて、では実際の「修復方法」を紹介してみよう。
ポイントは窪みの底をフォークの先で押し上げるのではなく、フォークの腹で外側から内側に芝生を「寄せる」ことである。
【ピッチマーク修復の手順】
1:窪みの境界線にグリーンフォークを直角に刺す
二本刃のグリーンフォークの場合は、フォークの平面部で芝生を押すのではなく、薄いサイド面を使って押す。サイド面を窪みの中心に向けてフォークを刺すイメージだ。
2:窪み中心に向かってフォークを小さく倒し、芝生を寄せる
二本刃を横向きにしてフォークを刺しているため、ワンアクションで窪みに向かって縦に芝生を押すことができる。フォークを傾ける角度が小さくて済むために、芝生の根を切ってしまうリスクが軽減できる。
3: 盛り上がった芝生をパターのソールで平らに抑える
グリーンフォーク作業はあくまでも偏った芝生を中心に戻すために行うもの。平らな面に仕上げるのはパターのソールで“トントン”することである。
経験者の方もグリーンフォークの刺し方(向き)については、知らなかったのではないだろうか。こんな薄いサイド面で芝生が押せるのか? と思ってしまうが、実際にやってみるとこれが実にやりやすく、素早くきれいに芝生が戻る。所作としても上級者っぽくみえるので、ぜひお試しいただきたい。
取材協力/太平洋クラブ八千代コース 写真/高梨祥明