プロゴルファーや他の競技のプロアスリートから「他者からの目線や評価が気になりパフォーマンスが下がる」という相談をよく受けます。ここでいう他者とはコースでの同伴者、ギャラリーだけでなく親やコーチ、友人ゴルファー、スポンサーなどその場にいない人も含まれます。
これはアスリートでもビジネスパーソンでも誰しもに共通する課題だと思います。とくに結果を評価される立場にあるプロになればなおさらですね。ちなみにあなたはゴルフ、仕事で他者評価や他者の目線を気にするほうですか?
「下手だと思われたくない。センスがあると思われたい」「ミスしたあとにはずかしくなる」「スコアが悪いとカッコ悪い」。誰もが少なからず考えることだと思います。今回はその他者目線の対処をテーマにしていきたいと思います。
そもそも私たち人間は集団の中で生活、活動する生き物です。他者と共存して生きていくために他者との関係性を良好に保つことは生存本能とも言えます。だからこそ、常に他者からの目線や意見、評価は気になって当然のことです。問題なのは過剰に気にしてしまい、不必要なストレスやプレッシャーを作り出しパフォーマンスを低下させてしまうことです。
たとえばあるプロゴルファー・Aさんが大事な公式戦前に沢山の人からメールを受け取ったとします。家族、友人、コーチ、スポンサーの担当者から「今回の試合も応援していますね! 優勝目指して頑張って」といった激励のメッセージです。
するとAさんは本当に多くの人に応援されている感覚と同時に、実際の試合当日、会場にメールをくれた人たちがいなかったとしても、どこかで見られているような感覚になるわけです。そして、そのような状態でゴルフをしていて途中のスコアや最終的な結果が思わしくないと「応援してくれたみなさんの期待に答えられなかった。申し訳ない」と過剰に落ち込んでしまうのですが、ここで応援を受けた当事者側と、応援した他者側に大きなギャップがあるんです。
まず応援を受けた当事者側であるAさんは「応援をもらったのにもかかわらず、結果が出せなかった。そのことを応援してくれた側もかなり残念に思っている」というくらい、過剰に他者目線を気にしてしまいます。
しかし、応援していた側の目線に立ってみると、実はそこまで深刻な思考にはならないんです。なぜならその人たちはAさんの応援に専念しているわけではなく、日々の仕事や日常生活があり、他の人間関係もあるからです。
そんななかでAさんが試合で結果を出せなかったことを知っても、「また次も頑張ってね」という気持ちは芽生えても、Aさんが感じているほど応援した側はAさんを気にしていないのです(もちろん、Aさんと近しい関係である親やコーチは自分のことのように悔しがっていることもあるでしょうが)。このように当事者と他者では評価のギャップがあることがほとんどです。
アスリートに限らず、ビジネスシーンでもこれは同じです。たとえば会議でプレゼンテーションをしているBさんがいたとします。話し手側のBさんとしては、プレゼンを聞いている側全員が自分の一挙手一投足に注目していると感じてしまいますが、当のプレゼンを聞いている側は、Bさんが思っているほど集中しているわけではないはずです。
2つの例を挙げましたが、結論を言うと私たち人間は基本的に自意識過剰。「あの人にゴルフが下手だと思われているかも」「あの人からの評価が下がるかももしれない」と考えている心配のほとんどは、無駄な思考である可能性が高いのです。
コーネル大学心理学者トム・ギロビッチも数々の他者評価に関する実験をした結果こう言っています。「私たちは『他人が自分に注意を向けている』と思うが、自分が思っているほど他人は自分を気にもしていない」と。されてもいない他者評価を自意識過剰で気にしているとしたら、そのエネルギー消費はとてももったいないですよね。
ではそういった他者の目や評価を気にせず、楽に自分のやるべきことに集中するための対処法として、次の3ステップを意識してみてください。
【1】他者評価を気にしている自分を認識する
【2】他者は自分が思っている10%も自分のことを気にしていないと考える
【3】深呼吸とともに他者評価を手放す
他者評価、目線を気にすることは人として当然のことですが、過剰に気にする必要はありません。今回のテーマは万人に共通するものだと思います。ぜひゴルフや仕事など、様々な場面で活かしていただければ幸いです。