アイアンが曲がり出すことが不安
競技ゴルファーからよくある相談に「アイアンが曲がり出すとその感覚が止まらなくなり、それ以降いつものショットが打てなくなる」という悩みがあります。曲がり始めるとスウィングを修正する→スウィングを変えたために次は逆に行き出すという状況なども多いと言います。そして、そうなるとスウィングが余計わからなくなるわけです。
先日も上記と同様の相談をしてくれたゴルファー(以下Aさん)は「そもそも試合でしか曲がるということはなく練習ではほぼ曲がらないですし、練習のラウンドでもたまに出るくらい。なぜか試合になるとそれが出るんですよね。試合本番の緊張感などがそうさせるんですかね? どう対処すべきですか?」と相談してくれました。
こういった事態に対して、メンタルコーチとしておすすめする具体的対処法を今回は1つ紹介していきます。かなり具体的な手法なので上記の悩みがある方にはとくに参考になるかと思います。
ショットに集中することをやめる
結論から言うとショットに集中するということをやめてもらいます。「えっどういうこと? 何言ってんの?(笑)」と思う方も多いはずです。もう少し詳しく言うとショットではなく打つまでのルーティンに集中するということをやっていくんです。
例えば、先日引退したラグビーの五郎丸選手はフリーキック前に行うルーティンで話題になりました。あのルーティンはキックに集中するというより「ルーティンを丁寧に遂行することに集中する」ということをやっていたのです。ルーティンに集中することで最後のキックは「いつも通り蹴るだけ」という状態にしていたのです。これと同じようにショットではなくルーティンに集中するんです。
具体的に説明していきましょう。Aさんのショットまでのルーティンはこうでした。
【1】ボール横で素振り
【2】後方から球筋イメージをする
【3】アドレスに入り打つ
この一連の流れを無意識に遂行していました。このルーティンに私からの提案でいくつかの要素を付け足してもらいました。
【1】ボール横で素振りをし、5歩後方に下がる
【2】後方で深い深呼吸をする
【3】球筋イメージをする
【4】ボールまで5歩ほどで戻りアドレスに入り一定のリズムで打つ
これが提案した新しいルーティンになります。そして、ここからがポイントで「ショットに集中するのではなくルーティンを丁寧に遂行することに集中する」ことをやっていきます。
ルーティンに集中するメリットは二つありまして、まず一つ目が不必要な思考が減ることです。ルーティンを意識的に行うことで「前みたいに曲げたら嫌だ」「ここでミスしたら痛い」などというこのワンショットに不要な思考やマイナス思考が遮断されるのです。
そして二つ目が「練習でのショットに近づく」ということ。これも大きいですね。ルーティンを丁寧に遂行し最後は「ただいつも通り振るだけ」の状態にしているために練習と同じ動き、スウィングに近くなります。
ライなどの条件はいいのに試合やコースで練習通りのショットができない。そういった場合のメンタル的な要因の多くは試合特有の思考が起因しています。「結果を残したい」「良いプレーを観てほしい」「スコア〇〇以上は出したい」「また同じミスしたらどうしよう」などの思考がプレッシャーや緊張を生み出し、それが筋肉の硬直や体の連動性などを練習とは違うものにしている可能性が高いです。
上記に対処するために、そして練習での自分のスウィングを出すためにショットに集中してはいけないのです。「ルーティンに集中する」ことでいつもの自分のショットを引き出したいわけです。この方法はティーショットやアプローチ、パターでも応用できる対処法です。今回紹介したようなお悩み、課題がある方はぜひご自身の課題に合わせて「ルーティンに集中する」ことを試してみることをおすすめします。