ローズは“劇的ホールインワン”でまさかの126位に
コロナの影響で渡航制限がかかり母国のオーストラリアに戻るのもアメリカに再入国するのも困難が伴い「精神的なダメージが大きかった」と成績不振に陥っていたアダム・スコットはウィンダム選手権で久々に上位争いを演じプレーオフに進出した。
サドンデス1ホール目、1.2メートルのバーディパットを沈めれば優勝、というところまで行ったが無情にも白球はカップに吸い込まれることなく2ホール目でバーディを奪ったキスナーが栄冠に輝いた。
元世界ランクナンバー、スコットの身に降りかかった運命のいたずら。勝ったキスナーは勝負の機微をこんな風に表現した。
「我々がプレーするのは気まぐれでクレイジーなゲーム。賞金も成功も喜びも紙一重。ほんのわずかな差を競い合うたびに感情が上下に大きく揺さぶられる」
紙一重。それをもっとも強く感じたのがスコット同様世界ランク1位の経験者ジャスティン・ローズかもしれない。こちらも今季いいところなくポイントランク138位と圏外に低迷していた。
しかしウィンダム選手権では上位争いを演じ5月の全米プロゴルフ選手権以来のトップ10入り(10位タイ)を果たし、ホールアウトした時点ではギリギリ125位を確保していた。
ところが状況は刻一刻と変化。ポイントランク132位だった伏兵チェッソン・ハドリーが最終日の16番でホールインワンをマークしリーダーボードを51位から15位に駆け上がったことで形勢逆転。ハドリーが125位に滑り込みローズが126位の圏外に弾き出された。プレーオフシリーズが開設されてから14年連続で同シリーズに出場していて、18年には年間王者にも輝いているローズだが、その(連続出場)記録はついに途切れた。
それでも予選落ちしトップ125入りを逃したリッキー・ファウラーやローズは長期シードを持っているため来季の出場権を失うことはない。しかし大部分の選手たちは来季の職場を確保するため125位の境界線を死守する戦いを繰り広げてきた。
ポイントランク121位に入りシードを守ったインド出身のアニルバン・ラヒリはシード争いの厳しさについて「毎日拳銃をこめかみに突きつけられているようだった」と振り返る。華やかなツアーにあって多くの選手が一攫千金と失業の危機との紙一重の戦いに挑んでいるということだ。
紙一重といえばレギュラーシーズン終了時点で150位の小平智もそう。125位以内に入れなかったことで来季のシード権を争う入れ替え戦(コーンフェリーツアーの上位者と200位までのシード落ち選手の戦い)の出場が決まった小平だが、150位以内に入ったことで限られた試合に出場できる条件付きのシード権は確保できた。
125位と126位の境界線同様、150位と151位の境界線もシビアでドラマチックだ。
2021年8月16日22時0分 文章を一部修正いたしました