いつも上位にいるのに、なぜか勝てない選手の1人――トニー・フィナウが、フェデックスカップ・プレーオフ第1戦「ノーザントラスト」でキャメロン・スミスとのプレーオフを制し優勝。2016年「プエルトリコオープン」優勝以来、1975日(約5年半ぶり)のツアー2勝目を飾った。
今大会の優勝で、フェデックスカップランキングで1位に。2015年からPGAツアーのメンバー入りを果たしているが、6年目にして総合優勝の可能性も大いに見えてきた。
「すごく特別な優勝だ。前回優勝したときと今とでは、まったく違う人間になっており、よりいい選手になっているはずだ。今後の未来もこのように明るいものだといいね」
2勝目を挙げるまでに5年以上の月日を費やしたが、その間、2位が8回、トップ10入りは39回あった。ショットもパットもいいのに、それがスコアに反映されないことも多かったようだが、彼は「決して諦めなかった」という。自分自身や自分のチームを信じ、毎日一生懸命練習を重ね、トレーニングを積み重ねてきた。
「自分を信じることができなければ、相手をやっつけることなどできない。ゴルフは難しいゲームだが、ボクは自分を心から信じることができたし、また、そうしなければならないんだ」
「ノーザントラスト」の週に入り、彼はショットもパットも絶好調で、連日60台を叩き出していた。とくに2日目に64をマークしたときは、「パットが決まっているのが大きい」とコメント。今年の「全米オープン」の頃から、握り方を変え、ピンパターに変えたのが奏功しているのだという。
今大会の最終日は、ハリケーンの襲来のため日曜日には行われず、月曜日に順延されたが(月曜日に順延は、2019年ZOZOチャンピオンシップ以来)、彼は悪天候でオフになった日曜日、ホテルの部屋のカーペットの上で1時間半ほどパターの練習をしたそうだ。カーペット上のパッティングで、何か発見はあったのか? と記者に問われると、
「とくにないよ。ただパッティングの調子がいいことはわかっていたからね。パットが決まってなかったら、この位置にはいない。ただ複雑に考えないようにしていたよ」と答えていた。
3日目を終えて、もともと「6つ伸ばして、20アンダーを出せば優勝のチャンスがある」と断言していたフィナウ。その予言通りに彼は最終日に1イーグル、5バーディ、1ボギーの67(パー71)をマークして、20アンダーに到達。キャメロン・スミスとのプレーオフに持ち込んだ。
プレーオフで2勝0敗と、100%の勝率を誇っていたキャメロン・スミスを相手に、1勝2敗という勝率のフィナウには少々分が悪いようにも思えたが、フィナウにとって過去、プレーオフで負けた記憶は、“やる気スイッチ”のようなものであり、プレーオフになってもまったくガッカリしなかったという。
今後フェデックスカップ・プレーオフは、第2戦「BMW選手権」、そして最終戦の「ツアー選手権」へと続く。フェデックスカップで人生初の総合優勝を飾るには、引き続き優勝争いに食い込まないといけないが、9月末に行われる「ライダーカップ」で確実にチーム入りを果たすためにも好成績を残さなければならない。今大会の優勝で、米国チームの6番手まで浮上しているが、実力で(ランキング上で)メンバー入りができるのは6人まで。現在、ギリギリの順位である。
「今シーズンの優勝者として、いいプレーを持続しながらライダーカップに臨みたい」
優勝後の夜は、コロナ禍のため、5年ぶりの優勝を家族や友人と派手にマンハッタンなどで祝うこともできないが、大好きな寿司をテークアウトして、ささやかに優勝の喜びに浸るという。そして最近ハマっているというNetflixの“ロマコメ”を観ながら、リラックスした夜を過ごすのがトニー・フィナウの祝勝スタイルだ。