プロゴルファーのメンタルトレーニングをしていて不思議に思うことがあります。その1つがトーナメント前日の練習ラウンドと試合当日のゴルフがまったく変わってしまうことがあること。
たとえばその練習ラウンドではショットやパターも調子が良かったのに本番の試合では調子が狂うといったことですね。学生の頃から圧倒的に積み上げてきたゴルフスキルを持ち、沢山の試合も経験しているプロゴルファーでも、そうなってしまうのです。
皆様もご存じのようにツアートーナメントのような公式戦の前にプロたちは「練習ラウンド」をまわります。そして、練習ラウンドでコースマネジメントや技術確認を行い、トーナメントにのぞみます。そして、練習ラウンドではスコアが3アンダーだったのに本番では3オーバーのスコアだったということがザラにあります。
もちろん、コースセッティングの影響、身体の疲労やフィジカル的な要因によるスウィングの変化など1日でゴルフが変わってしまう要素は沢山あるのは承知です。しかし、客観的に観て同じプロゴルファーが1日で3アンダーから3オーバーと6打もの差が生まれるのはおかしいのではないかと私は疑ってみるようにしています。
では、何がそのような差を生むのか? もちろん、ここには様々な要素があるのですが大きな要素として「心理状態の変化」があります。
プロゴルファーなのでスキル的要素、フィジカル的要素は1日24時間での変動範囲は少ないはずです。しかし、心理状態は1日、半日、時間単位でも変動します。「昨日はピンに寄っていたショットが今日は出だしから寄らない」「昨日は入ってくれていたバーディパットが今日は入ってくれない」ということがあると心理状態は昨日や数時間前とは変わってきます。
すると「次もショットが寄らなかったらどうしよう」「このパットも入らないんじゃないか」「予選通過ラインぎりぎりだから決めないとまずい」などとセルフトーク(自己対話)も変わります。そしてそれらのセルフトークが不安やあせりの感情を生み出すことで筋肉が緊張し、昨日の良かったスウィングやストロークにズレが生まれ、ミスが起きる。このように考えていくと心理状態の変化がいかにゴルファーの技術発揮に影響しているかがわかりやすいかと思います。
そして、その対処として心理状態の変動へのケアや調整をとっていく必要があります。ここではそのケアや調整を「チューニング」と呼ぶことにしましょう。
ゴルファーであれば誰もが技術的、フィジカル的なチューニングはしていきます。スウィングが乱れているとすれば技術的な調整、フィジカル的な誰もが調整をしていきますよね。このように技術やフィジカルと同様にメンタルも試合前にはチューニングをしていく必要があります。そして、そのチューニングをするためには「戻る場所」が必要です。つまり、パフォーマンスを発揮しやすい心理状態を知るということです。
ここで簡単に自分のパフォーマンスを発揮しやすい心理状態を考えてみましょう。実際にプロの方には次のような問いかから戻るべき心理状態を言語化していきます。
【良いパフォーマンスを発揮できているときの心理状態への問い】
・どんな目標を持ってゴルフをしているか?
例)シンプルなプレーのテーマを1~2個持ちそのプレー目標を徹底している
・チャレンジやエンジョイの気持ちはあるか?
例)練習してきたことを試すというチャレンジする気持ちとゴルフを楽しむ気持ちがある
・リラックスとプレッシャーのバランスはどうか?
例)試合本番の緊張感を心地よく感じ、体は地に足がついている感覚
・セルフトーク(自己対話)はどんな状態か?
例)「次もうまくいく」「次のプレーはこうしよう」とポジティブなものや次のワンプレーのことへ意識を向けられている
このように自分がパフォーマンスを発揮できている心理状態を言語化しておけば「心が戻る場所」ができ自分をチューニングすることも可能になります。例えば試合前にいつもよりプレッシャーを感じていると気づけばリラクゼーションすればいいですし、結果を意識していることに気づけば、良いときのようにプレー目標に注意を向ける意識をするというようにチューニングすることができます。
まだまだ日本ではゴルファーがメンタルトレーニングをすることは一般化されていませんがまずはこのような記事を読んで頂いてくれた方からメンタルも技術やフィジカルと同様にチューニングが必要だと気づいてもらえると嬉しいですね。