どんなミスも10秒で忘れる金魚のような切り替えの早さで好スタート
5アンダー67をマークし7位タイの好発進を切った松山英樹が「トップは10アンダーくらい出ると思っていた」というケーブスバレーGC。この夏雨が多かったこともありグリーンが軟らかく飛ばし屋が気持ちよくドライバーを振れるタイプのコースだけに松山の予想通り伸ばし合いの展開に。10アンダーとまではいかなかったが8アンダー64をマークした3人が首位に並んだ。
そんななか注目は前週楽勝ペースだったにも関わらずサンデーバック9で逆転を許し優勝を逃したラーム。世界ランク1位、フェデックスカップポイントランク2位につける彼は年間王者の本命でもある。
前週のノーザントラストの敗戦からどうやって立ち直ったのかを聞かれたラームは「金魚になった」と説明。それってどういうこと?
じつはラーム、昨年Apple TVのオリジナル作品として配信されたテレビドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』の大ファン。アメリカンフットボールのコーチだった主人公テッド・ラッソがイギリスに渡り経験のないサッカーのコーチとしてチーム立て直しに奮闘するコメディだが、最初のエピソードに“金魚”の逸話が登場する。
コーチはスランプの選手に「金魚は10秒しか記憶がない地球上でもっとも幸せな生き物である」と持論を展開。すなわちどんなミスも10秒で忘れる金魚のような切り替えの早さが必要だというわけだ。
テッド・ラッソファンのラームは金魚ルールを取り入れ前週敗れたことも「試合を通していいプレーをしていたけれど、ほんの2つか3つのミスショットで優勝を逃しただけ」と割り切り悪夢を記憶の彼方に押しやった。それがBMW選手権の初日トップ発進に繋がったというのだ。
タイガー・ウッズも10秒でミスを忘れるルールを自らに課すなど、メンタルが勝負の鍵を握るゴルフではいかにミスをなかったことにして目の前のショットに集中できるかが重要なのだ。
ではツアーでもっとも偉大な“金魚”は誰か? ラームに問うと彼は「間違いなくダスティン・ジョンソン」と即答した。「彼には他の誰よりも不幸な瞬間を忘れる能力がある」。
かつてノミの心臓といわれメジャーになかなか勝てなかったDJことジョンソンだが、最近はトップに肩を並べるラームが一目置く鋼のメンタルを持ち合わすようになった。
ちなみにDJは前週本番直前にドライバーのヘッドに亀裂が入っていることに気づきドライバーなしで初日を戦い結局予選落ち。だが持ち前の“金魚力”で今週は松山と同じ7位タイと上々の滑り出しを見せている。
果たして今週ラームは金魚になって先週のリベンジを果たせるか? 注目だ。