
テキサスチルドレンズ・ヒューストンオープンを制したゲーリー・ウッドランド(写真/Getty Images)
最終日最終ホール、グリーンに向かって歩を進めるウッドランドの後方から、同組で回り初優勝を狙ったニコライ・ホイガードとディフェンディングチャンピオンのミンウー・リーがギャラリーを煽るような仕草を見せた。
「2人で相談したんです。ゲーリーに花道を歩かせてあげよう、って。彼にとって本当に素晴らしい瞬間でした。見ていてとてもクールだった。僕もうれしかったです」とホイガード。同組の2人も最高の復活劇を演出するために一役買っていたのだ。
グリーンを幾重にも取り巻く大ギャラリーから「ゲーリー!」「ゲーリー!」の声援が飛ぶ。グリーン左サイドからのアプローチを1.5メートルに寄せウィニングパットを沈めた瞬間、彼はまるで翼を広げるように両手を上げ目を閉じて天を仰いだ。
直後のインタビューでは込み上げる涙で声を詰まらせながら「ゴルフは個人競技ですが今日はひとりじゃありませんでした。家族、チーム、ゴルフ界全体、多くの人々が私を支えてくれました。何かに苦しんでいる人がいたら私を見て諦めず戦い続けて欲しい」と語ったウッドランド。
しかしこれは単なるハッピーエンドではない。大会前に彼は心的外傷後ストレス症候群(PTSD)と診断されたことを打ち明けている。戦闘経験者や暴力の被害者などに多く見られる症状である。
ウッドランドの場合は手術から復帰まで想像以上に早いペースだったこともあり彼は毎週、選手やキャディ、ファンから温かく迎えられた。「元気そうで何より」「良かった復帰できて」という言葉に微笑みながら歩み続けて来た。
しかし内面は複雑だった。誰もが信じたがる理想のシナリオと、実際に自分が生きている現実の間に大きなギャップがあったからだ。米ゴルフダイジェストのインタビューで彼は本心とそぐわない笑顔を浮かべる自分は「内面が死んでいくような感覚」だったと語っている。
背後から人が近づいてくると視界がぼやけ自分が何をしているのかわからなくなり涙を流すこともあった。それを隠そうとトイレや車に駆け込み、耐えた。言い表せないほどの恐怖と苦痛。理想の自分を演じ続けるのは限界だった。
PTSDを抱える退役軍人の話に耳を傾け「現実の世界に生きる。ツアーこそ自分の居場所なのだ」と覚悟を決め、自らの境遇をカミングアウトすることを決断した。正直な思いを吐露したことで少し肩の荷は下りた。しかし彼は「もう1度勝ちたい」という夢を叶えたいまも闘い続けている。
「ただただ癒しの道を歩み続けなければなりません。今日はいい1日でしたが私は闘い続けます。これからさらに大きな闘いが待っていますが諦めずに戦い続けます」
ダンロップフェニックスに来日していた20代だった頃の彼の人懐っこい笑顔はピュアな内面を表しているようだった。
ここ数年ZOZOチャンピオンシップやベイカレントで来日したときも笑顔で「(術後の調子は)徐々に良くなっているよ」と語っていたが、こんな葛藤を抱えていたとは。
心優しい男の「癒しの道」を応援したい。
【動画】テキサスチルドレンズ・ヒューストンオープン最終日のハイライトをチェック【PGAツアー公式YouTube】
PGA TOUR Highlights | Round 4 | Texas Children's Houston Open | 2026
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