日本開催のPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」は日本のエース・松山英樹の優勝で幕を閉じた。そんな松山の最終日の模様を、現地で取材していた週刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウがレポート。

こんにちはケンジロウです。千葉県の習志野CCに来ております。ZOZOチャンピオンシップの最終日を取材してきました。

最終日は雲一つない晴天に恵まれ、風もなく、気温も20度近くあって、まさに気持ちのいい秋晴れでした。現地観戦に訪れたギャラリーのみなさんにとって、最高の観戦日和でしたね。

もうみなさん結果はご存じかと思います。1打差の首位でスタートした松山英樹は、前半に1イーグル、1ボギーで一つスコアを伸ばして折り返し、後半は1イーグル3バーディ1ボギーで通算15アンダーでフィニッシュ。2位タイのトリンガーリに5打差をつけて、見事優勝を飾りました。

画像: PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」を制した松山英樹

PGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」を制した松山英樹

朝の練習場から見ていましたが、松山の表情はちょっと“硬いなぁ“という印象。練習場に現れた松山の口数は少なく、明らかに緊張している様子が見てとれました。

マスターズ以来の最終日最終組、しかも有観客での優勝争いは久しぶりとあって、百戦錬磨の松山でもやはり硬くなるんでしょうね。実際のところ、3日目まで首位をキープしてきましたが、たった1打差のリードでしたからね。下には4打差でムニョス、5打差でフリートウッド、6打差でコリン・モリカワもいますからね。まだまだ予断を許さない状況とは言えたでしょう。

その緊張感のままスタートし、序盤5番まではなかなかスコアが伸ばせない展開。その重い空気が一気に晴れたのが6番のイーグルでしょう。10メートルぐらいの長い距離のパットがど真ん中から入りました。早藤キャディによれば、「上って下る難しいライン」。やっぱり優勝するときって、こういうような“ビッグパット”が必ずありますよね。ここでスコアを2つ縮められたのは大きかったと思います。

その後8番でボギーを打って2位のトリンガーリに並ばれて後半を迎えましたが、11番でまた長いバーディパットを決め、13番でも3、4メートルの下りのバーディパットを決めて逃げ切り体勢に入りました。そして15番も5メートルの(おそらく)下りのフックを決めてここでトリンガーリと2打差。

思えば今大会は松山が決めたパットは“下り”が多かったように見えました。大会後にその話題を松山本人に向けてみると……。

「グリーンが早く仕上がっていたと思うので、(下りでも)神経を使いながらも入っていたなという感じですね。6番のイーグルパットは、カップの周りが影で距離感が出しづらかったんですけど、暗くなっていることで下っているのを意識することなく打てたのが良かったと思います」(松山)

大会を通じて習志野のグリーンのスピードと合っていたんでしょうね。難しいラインもしっかりと読み切っていた印象でした。

画像: 最終日6番のイーグルパットをはじめ、13番、15番と下りのパットをしっかり決め切るシーンが目立った

最終日6番のイーグルパットをはじめ、13番、15番と下りのパットをしっかり決め切るシーンが目立った

試合前の会見で、松山はショットの調子が「マスターズが10だとしたら今は1もないような状態」と言っていました。でも、最終日のプレーを見る限り、とても1以下のショットではない、本人が言うほど“悪くなかった”のではと思いました。

確かに水曜日の段階では練習場で右に左に球が散らばっていました。でも試合が始まってみると、ドライバーは曲がったとしても2打目が打てる位置にあるし、その2打目はだいたいグリーンをとらえていましたからね。

最終日を終えてパーオン率の平均は81.9%で、フィールド内1位。8割パーオンしているんですから、そりゃ他の選手からしたら「調子が悪いって何をおっしゃいます」といったところでしょうね。ドライバーショットも尻上がりによくなって、10番、11番、12番と完璧なショットを打ちました。後半の3バーディ、1イーグルにつながったのは間違いありません。

でも本当にショットの調子は「1以下」だったのか。試合後に本人にその質問をぶつけてみました。

「今日は2か3ぐらいだったと思います。結果としては8ぐらいはいきましたけど。残りの5とか上がった要因は応援してくれた方のおかげでしかないと思います。これだけ変わるんだなとも思いましたし、すごく嬉しかったです」(松山)

画像: 最終日のショットの自己評価はマスターズが10だとしたら「2か3ぐらい」。しかしギャラリーの応援の声が8まで調子を引き上げてくれたのだという

最終日のショットの自己評価はマスターズが10だとしたら「2か3ぐらい」。しかしギャラリーの応援の声が8まで調子を引き上げてくれたのだという

ギャラリーの後押しでショットの精度が上がるというのは、いかにもプロゴルファーらしいですね。久しぶりの有観客での優勝争いは松山にとってプラスに働いたんでしょう。でも、まだまだショットには満足してない様子。自分に何かが足りないと思って練習を続けるところはやはり凄いなと思います。メジャーに勝っても慢心せずに自分を磨き続ける、その姿勢が彼の強さの秘訣じゃないかと、今回の松山の優勝を見ていてつくづく思いました。

画像: 優勝を見届けるべく、最終日も多くのギャラリーたちが松山のプレー振りを見守っていた

優勝を見届けるべく、最終日も多くのギャラリーたちが松山のプレー振りを見守っていた

それにしても、「世界ランクってほんと世界ランク」ですよね。その順位が至極妥当というか、やはり上位者は上にきますね。今回優勝を争った松山英樹は19位、トリンガーリは69位。同組のセバスチャン・ムニョスは75位(※世界ランキングはZOZOの大会前の順位です)。トリンガーリも松山に肉迫していましたが、やっぱり最後の勝負どころの後半、サンデーバックナインで伸ばしきれませんでしたからね。松山はその点では比較的安心して戦えたのではないでしょうか。17番で松山もトリンガーリも同じように2打目をグリーンの左奥に曲げましたが、その後のアプローチの差は歴然、松山のロブショットは完璧で、2メートル弱に寄せていました(パーパットは外しましたが……)。

あの組に世界ランキング上位のコリン・モリカワやザンダー・シャウフェレでもいたら違った展開になっていたのではと思います。今回出場していないですが、もしジョン・ラームやダスティン・ジョンソンが後続から追い上げてでもいたら、なかなか落ち着いてプレーできないですよね。

いずれにしても、これで新シーズン開幕早々優勝を遂げたことになる松山。これで2021-2022シーズンを安心して戦えるのではないでしょうか。

「戦いやすくなるとは思います。今日はいいショットも悪いショットもありましたけど、きっかけをつかめそうな雰囲気は出ていたので、これをしっかり次につなげていい結果を出せるように頑張りたいと思います」(松山)

シーズン序盤の勝利は、今後の試合選びを楽にしますし、自身のスウィングへの取り組みに余裕ができそうですね。さらなる勝利、期待してみていきましょう。

写真/姉﨑正

画像: 宮田志乃プロ初登場!“パー4を最低でもボギー”で上がるためにユージに授けた秘策とは? youtu.be

宮田志乃プロ初登場!“パー4を最低でもボギー”で上がるためにユージに授けた秘策とは?

youtu.be

This article is a sponsored article by
''.