東京オリンピックでのメダルを期待されながらそれがかなわなかった松山にとってZOZOでの優勝は格別だった。2年前タイガーに次いで大会2位に終わったことに対するリベンジ、五輪でメダルを逃したことに対するリベンジ。ホームでの戦いは利点もある一方でプレッシャーも大きい。それを跳ね返し結果を出したのはギャラリーの声援のおかげだった。
ホームの地の利を痛感させた最近の例は9月のライダーカップ。米国キャプテンを務めたスティーブ・ストリッカーが故郷ウィスコンシンでチームを大差の勝利に導き至福の瞬間をホームのファンと分かち合った。
古くはラリー・マイズ。ジョージア州オーガスタ出身の彼が1987年のマスターズで優勝を飾ったがプレーオフの相手がグレッグ・ノーマンとセベ・バレステロスの二大巨頭。ビッグネーム相手に絶対不利な状況のなかサドンデス2ホール目の11番でグリーン外からチップインバーディを決めると飛び跳ねて歓喜する場面はマスターズ史上もっとも有名なシーンのひとつ。その夜オーガスタの住人は最高の気分で祝杯をあげたという。
先週米チャンピオンズツアーで史上最年長の64歳で優勝を飾り鉄人ぶりを見せつけたベルンハルト・ランガーにも思い出深いホームでの優勝がある。
1991年のライダーカップは欧米接戦でわずか1ポイント差で米チームが勝利した。最終日のシングルスの最後にランガーがもし勝っていたら形成逆転で欧州の勝ち。ところが1.8メートルのクラッチパットを外したことで敗戦が決まりランガーはうずくまり立ち上がることすらできなかった。結果、敗戦のA級戦犯といわれた。
しかし翌週母国ドイツのジャーマンマスターズでランガーはロジャー・デービスとのプレーオフを制して優勝。A級戦犯から頂点に返り咲いたその回復力はホームのファンを熱狂させただけでなく世界のゴルフファンの称賛の的となった。
タイガー・ウッズがライダーカップデビューを飾った1997年は史上初めてスペイン(バルデラマ)で開催された。ヨーロッパのキャプテンはスペインの星セベ・バレステロス。“ライダーカップの顔”的存在であるセベは選手たちの気持ちを鼓舞する独特な采配法でタイガー擁する米チームを14.5対13.5の僅差で撃破。ホームの大応援団を歓喜の渦に巻き込んだ。
期待に応えなければならないというプレッシャーとの戦いに打ち勝ちホームで力を発揮する選手たちにファンは自身の思いを投影して酔いしれる。選手もまたこれ以上ない達成感に満たされる。その事実はこれまでも、これからも変わらない。