ゴルフは自分の能力がスコアに反映されるわかりやすい競技です。ゴルフは野球やサッカーなどとは違いプレー中に相手から邪魔されるような他人要因がプレーに影響することは基本的にありません。
野球の打撃でいえばピッチャーがどんな球を投げるかが自分の結果に影響します。どれだけいいスウィングができていてもピッチャーが完全試合をできるようなパフォーマンスを出してくればヒットやホームランなどの結果を出すことは難しくなります。
野球では4打席ノーヒットだったとしても「今日は相手ピッチャーがよかった」と片付けることができます。「ノーヒットだったから自分はダメだ」と自分を責めなくてもよい日があるのです。
しかし、ゴルフはこの他人要因がないからこそ、自分の中で痛いミスをしてしまったときやスコアを想定以上に叩いたときに「自分はダメだ」と自己批判することが簡単にできてしまいます。
じつはこの当たり前のようにしてしまう自己批判があなたの「自己効力感」、いわゆる自信を奪っている可能性があります。
自己効力感とはある課題に対して自分はできると思える感覚のことです。例えば、この2年間80台を出すべくゴルフに一生懸命に取り組んでいるゴルファーAさんがいたとします。Aさんはこれまで何度も91や90のスコアを出したことがありますが後半のプレーのどこかでいつも痛いトリプルボギーやダブルボギーを出してしまい、90台のスコアに落ち着いてしまうという経験をしています。
この経験から、上記のように後半でトリやダボを叩いた要因は自分にあるととらえ「自分は大事なときにトリやダボを叩いてしまうゴルファーだ」「自分はそんなミスをする90台のゴルファーだ」と自分へのレッテルを貼ってしまうのです。この自分への厳しいレッテルが80台の壁をより大きくさせてしまうのです。
しかし、次のように自分のプレーをとらえることもできます。「あのミスさえなくパーであれば自分は89のスコアだった。だから自分は80台を出せる実力が十分にあるゴルファーだ」と自分へのプラスのレッテルを貼ることも可能なのです。
こんなことを言うと「スポーツに“たられば”はないだろ」とツッコミが入りそうですが、スポーツにおいては自分に都合のいいようにとらえる思考の癖がある人のほうが自己効力感の高い状態になり、自分の持っているパフォーマンスを出しやすくなります。
アマアスリートもプロアスリートもメンタルサポートをする中で「自分の最高のパフォーマンスを出せたときの状態は?」という質問に対して「試合前から今日はできる気がなんとなくしていた」ということを多くのアスリートが口を揃えます。つまり、なんとなくでもできる気がするという自己効力感があれば自分のパフォーマンスを発揮できる可能性があがるのです。
しかし、多くのゴルファーは自分のミスに厳しく「こんなミスをするからおれはこのレベルだ」と自分へ意味づけてしまいます。じつはこの自分への関りが必要以上に自己効力感を低下させている要因になっています。
80台のスコアを出したことがないのに「自分のベストは88です」と嘘をつくことはもちろん、よくないことでしょう。しかし、自分の中で「自分は80台を出せる実力が十分にある」と思うことは悪いことではありませんよね?
陸上短距離界ではかつて100メートル走の「9秒台の壁」というものがありました。人が100メートル走で9秒台を出すことは不可能だという時代があったのです。しかし、一人の選手が9秒台を出したとたんに「自分もできる」と自己効力感を高めた選手がその後、続々と9秒台に突入していったのです。
90台、80台、70台を目指すがなかなかその壁が遠いと言う方は自分のミスやプレーに対して厳しい評価ばかりしていないでしょうか。じつはその厳しい評価が自分の目標の足かせになっていることもあります。ぜひ、今回の内容を壁を越えるためのひとつの参考にしてもらえれば幸いです。