フィナウはサモアとトンガの血を引くポリネシア系アメリカ人。そして妻アライナさんはハワイ、オアフ島の出身だ。現在一家は雪の多い米本土ソルトレイク在住だがホリデーシーズンは妻の実家のある暖かいハワイで過ごしている。
3週間近いバケーションで家族との時間を満喫したフィナウは年末妻の母校カフク高校のフットボールチームの激励を行なっている。ちなみに妻は同校のバレーボール部で活躍していたアスリート。
友人がチームのアシスタントコーチを務めていることもありハワイ州チャンピオンの座を競っている同チームのメンバーの前でフィナウにスピーチして欲しいと依頼したのだ。
「もちろんフットボールに関しては何も話すことはない。いや話せないとまず伝えました」と人生で初めて体験したスポーツがサモアの伝統舞踊ファイヤーナイフダンシングだったというフィナウ。
「その代わり自分の体験談をお話ししました。彼らの中にはポリネシアンアスリートとしての僕を尊敬してくれている学生もいたようです」
彼が語ったのはアスリートして人間としてもっとも大切なこと。それは「キャリアを通して謙虚さとハングリーさを持ち続けけること」。成功してもおごり高ぶることなく謙虚であれ。満たされてもハングリー精神を持ち続けよ。それがフィナウの「アスリート人生の支えになった」という話をエピソードを交えながらチームの面々に語りかけたのだ。
「アスリートとしてではなく人として生涯大切にしてもらいことを伝えたので、受け止めた生徒たちも人生の糧にしてもらえたらうれしい」とフィナウ。
貴重な体験談に熱心に耳を傾けたカフク高校はその直後ハワイ州チャンピオンの常連で1位の座を競っていたセントルイス高校に49-14で圧勝。シーズン10連勝無敗の記録でチャンピオンに輝いた。
「自分のおかげなんてとんでもない。彼ら自身がきっと勝つことにハングリーだったんでしょう。でもひとつ言えるのは僕もレッドレイダー(チーム名)の一員と名乗っていいのかも、ってこと(笑)」
16年の初優勝から5年間勝星から遠ざかりながら腐らず謙虚に優勝を追い求めたフィナウは21年ノーザントラストでキャリア2勝目をゲットした。ポリネシアンアスリートの誇りはスポーツの垣根を超え次の世代に受け継がれる。