コンパクトなスウィングながら、キャリー300Yのドライバーショットを放つトミー・フリートウッド。切り返しの強烈な捻転差、美しいスウィングプレーン、常にピタリと決まるフィニッシュなどなど……。彼のスウィングには魅力的なポイントがたくさんあるのですが、私がいちばん好きなのは、両わきを締めたまま、体の回転で打っていくところです。
まずは、アドレスを見てください。両わきを締め、両ひじを自分のほうに向けることで、腕を体の前にキープしやすい状態を作っているのがわかります。
また、左手をストロング、右手をスクェアに握ったグリップは、いかにも腕のローテーションが入りにくそうで、「腕を使わず、体の回転で打つ」ことを想像させるアドレスと言えるでしょう。
実際、両わきを締めたまま、体の回転でバックスウィングしていくために、バックスウィング後半まで両腕が作る三角形が完全に保たれ、手元が体の真ん中にホールドされています。トップでは、わずかに手元が体の真ん中からズレますが、ダウンに入った瞬間、再び手元が真ん中に戻ってボールをとらえているのです。
驚くべきは、この「手元が体の真ん中にある」状態が、アフターインパクト(8コマ目)まで変わらないことです。通常、コントロールショットでもない限り、インパクト後は多かれ少なかれわきが空き、手元が体の正面から外れるものです。それが300Yを超えるショットでも外れないのですから、尋常ではありません。
これは、人一倍胸の回旋量が大きく、回旋スピードが速いフリートウッドだからこそできる動きだと言えますが、このゆるみのなさが、彼の正確性を支えていることは間違いないでしょう。
とはいえ、一般のプレーヤーがこれをマネするのは難しいでしょうし、マネをすれば飛距離が極端に落ちてしまう危険があります。そこでアマチュアのみなさん、とくに、中・上級者の方に参考にしてもらいたいのは、彼のインパクトです。
フリートウッドを見ると、右わきが締まり、右ひじが曲がった状態でインパクトを迎えていることがわかります。相撲の力士が相手を押し込むとき、わきを締め、ひじを曲げて押込んでいくように、ゴルフもこの形でインパクトしてはじめて、体のエネルギーをボールに伝えることができるのです。
また、左肩よりも右肩がかなり下がっているところも見逃してはいけません。この両肩のラインに沿って体を回すことが、前傾角度を保つ大きなポイントだからです。
多くのアマチュアは、ダウンでクラブをキャスト(リリース)してしまうために、インパクトで右ひじが伸び、前傾角度が崩れてしまいます。それが飛距離や方向性を失う原因となっているので、修正しておきたいのです。
ポイントは、①前傾角度が保たれていること。②左肩よりも右肩がかなり下がっていること。③右わきが締まり、④右ひじが曲がっていること。⑤ダウンでできた右手首の形(手首が甲側に折れた形)がキープされていることの5つ。この形をマネしてください。
もちろん、完全に彼と同じ形でインパクトすることは難しいと思います。でも、この形を意識して、シャドースウィングや素振りをすることはできるはずです。
右肩を下げながらダウンスウィングすると大きくダフリそうな気がするかもしれませんが、勇気を持ってチャレンジしてください。
はじめは、クラブを肩にかついでシャドースウィングし、右肩を下げてダウンスウィングする感覚をつかみます。次に、クラブを逆さに持ち、フリートウッドのインパクトの形(右わきを締め、右ひじを曲げ、手首の形を保った状態)を意識して、インパクトバッグやタイヤ、クッションなどを叩くのです。
そういう練習をすることで、0コンマ何秒でいいから、右ひじが曲がっている時間、前傾角度を保った状態を長くする。それができたら、みなさんの飛距離と方向性は確実にアップすると思いますよ。