コースの外ではPGAツアーとサウジの新ゴルフリーグ(サウジアラビアの人権問題について)両方を痛烈に批判したフィル・ミケルソンがメインスポンサーのKMPGから契約解され、キャロウェイも契約一時停止を発表するなど窮地に陥った最年長メジャーチャンピオンの話題で持ちきりだった。
そんな中無名のストラカが鮮やかな逆転V。オーストリア人ではじめて18年にツアーカードを取得しデビューからシードを守り続けている28歳は「信じられない。言葉にならない。この気持ちをどう処理すればいいのかもわからない」と興奮をあらわに。「信じられないことが起こった」と“クレイジー”という単語を連発した。
オーストリアのウイーン出身。14歳のとき家族とともに米ジョージア州に移住しジョージア大学時代には華やかな優勝こそないものの数々の試合で上位を賑わし知る人ぞ知る存在だった。双子の兄弟サムもジョージア大ゴルフ部のチームメイトである。
17年にプロ転向すると18年下部ツアーの賞金ランクトップ25以内に入り19年にPGAツアーに昇格。ルーキーイヤーからプレーオフシリーズに進出(シード獲得)するなど順調にキャリアを育み昨年の東京オリンピックにもオーストリア代表として出場している。
優勝後にはPGAツアーが用意したボードを掲げて自己紹介。
子供のころなりたかったのは「ピッチャー」
スピコリットアニマル(自分の精神を象徴する動物)は「ブルドッグ」
特技は「ピンポン」
朝食は「ドーナッツ」
親友は「双子の兄弟サム」と自筆で記している。
念願のツアー初優勝を挙げた彼、じつは飲み物にこだわりがある。同じコーラでもペプシは飲まずコカ・コーラひと筋。ツアーでは試合によって提供される飲料が異なるが、ペプシしか出されない場合はコカ・コーラを持参するほどのフリークだ。
この優勝で獲得した賞金は144万ドル(約1億6千万円)。これはシード選手になってから1シーズンで彼がもっとも稼いだ年の賞金を上回る。しかし賞金以上に価値があるのは14歳から人生の半分を過ごした第二の故郷ジョージアでおこなわれるマスターズの出場権を獲得したこと。
深い杜に囲まれ地元の人も足を踏み入れることが許されない聖地オーガスタナショナル。ジョージア大の学生には特別に練習するチャンスが与えられているがプロになって初めて掴んだプラチナ切符にストラカは胸を弾ませている。
ちなみにストラカが今シーズン6人目の初優勝者。無名の28歳がメジャーチャンピオンに勝つこともある。だからゴルフは面白い。