すべてのゴルファーあこがれの場所「オーガスタ ナショナル ゴルフクラブ」。「マスターズ」が開催されるこの美しいコースの魅力を写真家・宮本卓が語る
Bobby Jones ボビー・ジョーンズ
年間グランドスラムを唯一達成したことがあるのは、後にも先にもボビー・ジョーンズだけだ。彼は、ただゴルフが上手かっただけではない。ジョージア工科大学で機械工学を学び、ハーバード大学で英文学の学位をとり、エモリー大学の法学院に入学し2年目の途中で州の司法試験に合格し、退学して弁護士を開業した。
ゴルフはそういうさなかでやっていたのだから恐れいる。トーナメントに出た回数が非常に少なかったのには、こういった事情があったのだ。
自分の時間のほとんどを学生時代は勉強に、結婚すれば家族に、そして弁護士としての仕事、あるいは一市民としてボランティアに費やした。
晩年のインタビューでは次のように語っている。
「私の頭の中には、何よりもまず妻と子供が先にあった。その次が自分の職業。そしてゴルフは最後だった。私はゴルフが人生だと思ったことは一度もない」
1934年にマスターズが始まって88年が過ぎた。ボビー・ジョーンズは、この大会を通じて何を伝えたかったのか?
単なる成績だけを争う大会ではなく、このコースに集まった人たちが、それぞれ何かを感じ、何かを思い、ゴルフというスポーツの素晴らしさを享受する。
間もなく日が沈もうとしている。黄金色に輝くボビー・ジョーンズの日時計から発するものを静かに受け止める。
今夜もまたマスターズの夢を見よう。