Winner’s Trophy 優勝トロフィー
1934年、クリフォード・ロバーツの提案で大会名を「マスターズ・トーナメント」として始めようとしたが、ボビー・ジョーンズは名前がおこがましすぎると反対したため「ファースト・アニュアル・インビテーショントーナメント」としてスタートした。
だが開催直後からメディアは「マスターズ」と呼び、2年後には正式名称で呼ぶのはクラブのみとなった。それでもジョーンズは「マスターズ」という呼び名を承知せず、1939年にやっと「マスターズ」という名前を使うことを了承した。
しかし、その後オーガスタは重大な局面を迎えることとなった。アメリカが第二次世界大戦に参戦することになり、ゴルフコースも閉鎖を余儀なくされたのだ。メンバーの多くは兵役に就くか、ワシントンで戦争に関連する仕事に従事するしかなかった。ボビー・ジョーンズも空軍情報将校としてイングランドに出征。終戦までの3年間はトーナメントも中止となり、その間、コースでは牛や七面鳥が飼われ、コース維持のための資金に使われた。
4大メジャーのなかでいちばん最後に始まったマスターズ。幾多の困難を乗り越えながら歴史を積み重ねていった。歴代のチャンピオンの名前を辿っていくと試合の名シーンが浮かび上がる。
優勝者にはグリーンジャケットとゴールドメダル、それに加えクラブハウスをかたどったトロフィーのレプリカが渡される。
そのトロフィーの本物は、クラブハウスの中で燦然と輝き続けている。年号と名前が語りかけてくるものとは……。

写真・文/宮本 卓
1957年7月10日、和歌山県生まれ。1987年より海外に活動の拠点を移し、マスターズをはじめとするメジャーの取材だけでも100試合を超える。単にゴルフゲームを追うだけではなく、光と影を巧みに利用し、その奥に潜む人間の真理を表現。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員