すべてのゴルファーあこがれの場所「オーガスタ ナショナル ゴルフクラブ」。「マスターズ」が開催されるこの美しいコースの魅力を写真家・宮本卓が語る

Ike's Tree アイクツリー

 2014年の季節はずれの大雪で、17番ホールの通称「アイクツリー」がひどく損傷した。オーガスタのシンボル的存在だったこの木を、オーガスタ委員会は苦渋の決断で伐採することにした。

 1948年から亡くなる1969年までオーガスタのメンバーだった第34代アメリカ大統領のドワイト・D・アイゼンハワーはスライサーだったため、何度となくこの木に阻まれた。

 アイゼンハワーはこの木を切るべきだと提案、しかし創始者のひとりで当時の会長、クリフォード・ロバーツは大統領の提案を却下した。それ以降この巨木に「アイク(アイゼンハワーの愛称)ツリー」の名がついた。

 この木は優勝争いする選手にとっても厄介な存在だったが、樹齢100年を超える老松を選手たちは好意的に受け入れた。

 2011年マスターズ3日目、タイガーのティーショットはこの木に当たり、2打目を木の下の松葉の上から無理な体勢で打ち、左ひざとアキレス腱を痛めて長期欠場に追い込まれた。3年後に、まさかアイクツリーがなくなるとは想像だにしなかった。

 木が倒れた翌年のマスターズ、プレスルームの玄関には大きな切り株が展示されていた。

 くっきり浮かび上がる年輪。そこには小さな文字でオーガスタの歴史が書き込まれていた。

 今では17番210ヤード地点の巨木はなくなってしまったが、僕の目にはその存在がくっきり見えている。きっとメンバーや毎年オーガスタを訪れる選手たちもそうに違いない。

画像: 写真・文/宮本 卓 1957年7月10日、和歌山県生まれ。1987年より海外に活動の拠点を移し、マスターズをはじめとするメジャーの取材だけでも100試合を超える。単にゴルフゲームを追うだけではなく、光と影を巧みに利用し、その奥に潜む人間の真理を表現。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員

写真・文/宮本 卓
1957年7月10日、和歌山県生まれ。1987年より海外に活動の拠点を移し、マスターズをはじめとするメジャーの取材だけでも100試合を超える。単にゴルフゲームを追うだけではなく、光と影を巧みに利用し、その奥に潜む人間の真理を表現。全米ゴルフ記者協会会員、世界ゴルフ殿堂選考委員

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