準決勝では歴代チャンピオンで元世界ナンバー1のダスティン・ジョンソンに圧勝。決勝戦では19年の大会覇者ケビン・キスナーに付け入る隙を与えない完璧な勝利。「さすがに相手が強すぎた」と歴代チャンプに言わしめた25歳がWGC初の栄冠に輝いた。
試合中は終始落ち着いているように見えたが優勝が決まった瞬間、妻メレディスさんが駆け寄り抱き合うと堪えていた感情が溢れ出し思わず涙。インタビュアーがマイクを向けると「ちょっと待って」と制して応援に駆けつけた家族や友人と次々抱き合い喜びを分かち合った。
大会が行われたのはテキサス州のオースティンCC。テキサス州ダラスで生まれ育ちテキサス大学出身の彼にとってまさに地元中の地元での勝利に涙が止まらない。
「この状況がまだうまくのみ込めない。世界ランク1位? 実感が湧かないけれど、昔から慣れ親しんだコースで勝てたのはすごくうれしい。感無量だね」
18年にプロデビューし19年にコーンフェリーツアー(下部ツアー)で2勝を挙げレギュラーツアーに昇格すると20年には未勝利ながらフェデックスカップのポイントランク5位に入りヴィクトル・ホブランを抑えてルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。だがホブランが次々に勝利を挙げ世界ランク3位まで上り詰める中、シェフラーは勝てず。それでも未勝利の選手でもっとも上位の同ランク15位につけていた。
ノドから手が出るほど欲しい優勝のチャンスが訪れたのはツアーでもっとも多くのギャラリーを集める2月のWMフェニックス・オープン。そこで昨季の年間王者パトリック・キャントレーをプレーオフで下し念願の初優勝を飾り無冠の王者を返上すると、直近5試合で3勝を挙げ眠れる獅子がついに覚醒のときを迎えた。
3人姉妹に囲まれシェフラー家唯一の息子として育った彼はアマチュア時代からマッチプレーに滅法強く、マッチプレー形式で行われる全米ジュニア、全米アマでも好成績。プロでも昨年のライダーカップで当時世界ランク1位のジョン・ラームにシングルスで勝利するなど勝負強さを発揮した。
ちなみに3人姉妹の長女キャリーさんはテキサスA&M大学のゴルフ部出身。17年の全米オープンでシェフラーが予選を突破しローアマチュアに輝いたときにキャディを務めたのがキャリーさんだ。
世界で160勝以上挙げているグランドスラマー、ゲーリー・プレーヤーは言う。「優勝する者とそうでない者の差は誰にもわからない。4日間72ホールを戦って勝敗を分けるのは1打か2打。そこで勝ち切るのは天の采配があるのだろう。だが天の采配を左右するのがプレーヤーのハート。勝つのは技術や戦略ではない。最後は心の勝負だ」。
シェフラーを勝利&ナンバー1に導いたのはどんな状況にも動じない強い心の賜物だった!?